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一家の責任者として家業を総括していたものと目すべき父と、同居家族の一員として右家業に従事しその所有車を家業のためにも使用していた息子の双方について、運行供用者責任が認められた事例
自動車損害賠償保障法3条
判旨
自動車の所有者および一家の責任者として営業を総括する者は、家族による独断の運転であっても、客観的に運行支配と運行利益が認められる限り、自賠法3条の「運行供用者」として賠償責任を負う。また、被害者の傷害が死亡に比肩する精神的苦痛を親族に与える場合には、民法711条を類推適用して親族固有の慰謝料請求を認めることができる。
問題の所在(論点)
1. 所有者ではない一家の責任者および所有者たる家族は、他の家族による独断の運転について自賠法3条の「運行供用者」にあたるか。 2. 被害者が死亡に至らない重大な傷害を負った場合に、その両親は固有の慰謝料を請求できるか。
規範
自賠法3条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の運行を支配し(運行支配)、その運行による利益を享受する者(運行利益)を指す。具体的には、当該自動車の運行について指示・制御をなしうべき地位にあり、かつ、客観的に見てその運行が当該人物の支配権に基づきその者のためにされたと認められるかによって判断する。また、被害者が死亡していない場合であっても、傷害の程度が死亡に比肩し、親族がそれと同等の精神的苦痛を受けた場合には、民法711条の類推適用により親族固有の慰謝料請求が可能となる。
重要事実
上告人A1は父、A2・A3はその子であり、同居して雑貨店およびガソリンスタンドを共同経営していた。本件自動車の所有者はA2であるが、家業のために使用されていた。一家の責任者であるA1および所有者A2は、免許を持つA3が以前に数回運転した際も放任していた。本件事故は、A3が近所の怪我人を運ぶため独断で運転中に発生した。また、被害者B1の傷害は極めて重大であり、その両親B2・B3も甚大な精神的苦痛を被った。
あてはめ
1. A1は一家の責任者として営業を総括しており、A2は自動車の所有者である。両名はA3の運転を放任していた経緯もあり、自動車の運行を指示・制御しうる地位にあったといえる。本件運転がA3の独断であったとしても、客観的には両名の運行支配下における運行と評価でき、家族の営む事業や生活の範囲内として運行利益も帰属する。したがって、A1・A2ともに運行供用者にあたる。 2. B1の傷害は、その両親が死亡時と同等、あるいはそれ以上の精神的苦痛を受けるほどに重篤なものであった。このような特段の事情がある場合には、民法711条を類推適用して両親の慰謝料請求を肯定するのが相当である。
結論
A1およびA2は「自己のために自動車を運行の用に供する者」として賠償責任を負う。また、被害者の両親である被上告人らの固有の慰謝料請求は認められる。
実務上の射程
運行供用者性の判断において、家族・事業主という属性から運行支配・利益を広範に認めた事例。特に「独断の運転」であっても、日常的な管理実態から客観的・外形的に運行支配が及んでいると判断される点は、実務上重要である。また、傷害事案における近親者の慰謝料請求(民法711条類推適用)の先駆的判断として、死亡に準ずる重傷事例で引用すべき判例である。
事件番号: 昭和48(オ)1169 / 裁判年月日: 昭和49年11月12日 / 結論: 棄却
甲所有の自動車を乙が無断で私用のために運転して事故を起こした場合において、甲が右自動車のドアに鍵をかけず、エンジンキーを差し込んだままこれを第三者が自由に立ち入りうる自己の駐車場に駐車させていた事実があり、また、乙は、事故の数時間前まで甲の従業員であり、短時間内に返還する予定で乗り出し、しかし乗り出してから一〇分ないし…