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砂利採取販売業者の被用者が自己所有のダンプカーにより砂利運搬の作業に従事していたがたまたま私用のため右ダンプカーを運転し他人の生命を害した場合に使用者に自動車損害賠償保障法三条の運行供用者責任が認められた事例
民法,自動車損害賠償保障法5条
判旨
雇用関係に基づく車両の保管状況や事業態様から運行支配・運行利益が認められる場合、従業員が私用で無断運転中に起こした事故であっても、客観的外形的に運行が事業主のためにするものと解される限り、事業主は自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 自家用車を持ち込み運転していた従業員の運行について、事業主に運行支配・運行利益が認められるか。 2. 従業員が私用目的で、かつ運行禁止範囲外(構外)で運転中に起こした事故について、事業主の運行供用者責任が認められるか。
規範
自動車損害賠償保障法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)に該当するか否かは、当該自動車の運行について実質的な支配力(運行支配)を有し、かつ、その運行による利益(運行利益)を享受しているかによって判断される。また、私用・無断運転中の事故であっても、事業主と運転者の関係、車両の管理状況、事業の態様等に照らし、客観的外形的にみて事業主の運行の範囲内といえる場合には、運行供用者責任を免れない。
重要事実
砂利採取販売業を営む上告人(被告)は、Dを雇用し、D所有のダンプカーを砂利採取場内に持ち込ませて作業に従事させていた。燃料は上告人が提供し、ダンプカーは構内に保管され、Dとその家族も構内の飯場に居住していた。Dは無免許のため、運転範囲は構内に限定する約定であったが、給与はダンプ代込みで定額支給されていた。ある休日、Dは飯場を訪れた実妹を実家へ送り届けるため、無断でダンプカーを運転して公道に出、本件事故を惹起した。
あてはめ
上告人は、多数の従業員を雇い砂利採取を業とする中で、Dを雇用し、燃料提供や車両保管場所の提供を通じてダンプカーの運行を実質的に支配し、その稼働から利益を得ていた。したがって、基本的には運行供用者に該当する。次に、本件事故時の運行は私用かつ無断であったが、Dが事業主の管理する構内に居住・車両保管していたこと、上告人の事業の性質、雇用関係等の事情に照らせば、客観的外形的には上告人のためにする運行と解するのが相当である。運転範囲を構内に制限する約定は内部的事情に過ぎず、対外的な運行供用者性の判断を左右しない。
結論
上告人は「自己のために自動車を運行の用に供する者」に該当し、本件事故について損害賠償責任を負う。上告を棄却する。
実務上の射程
従業員の持ち込み車両であっても、管理実態から運行支配・運行利益が認められる場合の判断基準を示している。特に、運行制限違反や私用運転であっても、「客観的外形」による判断枠組みを用いて被害者保護を図る実務上の重要判例である。民法715条の「事業の執行について」の判断手法とも共通性がある。
事件番号: 昭和45(オ)267 / 裁判年月日: 昭和46年7月1日 / 結論: 棄却
小規模の信用協同組合の常務理事である甲が、長期出張に際し、同組合営業部長乙に託して甲所有の自動車を修理に出させたが、その際、修理工場への往復には乙の指示により組合従業員が運転にあたることを予想しつつ、不在中の自動車の管理を乙に一任した場合において、修理完了に際し乙から右自動車の引取方の指示を受けた組合従業員丙が、組合の…