賃貸中の建物につき売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記が経由された後に、仮登記義務者が賃料債権を第三者に譲渡しても、右賃料債権譲渡は、右仮登記に基づく所有権移転の本登記が経由されたことによつて、その効力を否定されるものではない。
賃料債権譲渡と仮登記後の中間処分
不動産登記法7条2項,民法466条
判旨
建物の所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後、本登記がなされる前に賃貸人が賃料債権を第三者に譲渡した場合、当該譲渡は仮登記に抵触する中間処分には当たらず、仮登記権利者は本登記を経ない限り賃貸人の地位を主張して賃料債権の帰属を争うことはできない。
問題の所在(論点)
建物の所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後、本登記がなされる前になされた賃料債権の譲渡は、仮登記に後れる中間処分として本登記により失効するか。また、仮登記権利者は本登記前に賃貸人の地位(賃料債権の帰属)を主張できるか。
規範
1.所有権移転請求権保全の仮登記後にされた賃料債権の譲渡は、仮登記によって保全される権利内容と抵触する処分とはいえず、本登記によって直ちに効力を否定される中間処分(不動産登記法上の中間処分)に当たらない。2.賃貸中の建物の所有権を譲り受けた者が、賃借人に対し賃貸人の地位を主張するには、原則として所有権移転登記を要する。仮登記の状態では、第三者に対して所有権取得及びこれに伴う賃貸人の地位の取得を対抗できない。
重要事実
建物の所有者Dは、E社に対し建物を賃貸していた。その後、上告人のため売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記が経由された。この仮登記後、DはE社に対する賃料債権を被上告人に譲渡し、確定日付のある通知を了した。上告人は、仮登記の存在を理由に自らが賃料債権を取得したと主張し、債権譲受人である被上告人に対して賃料債権の帰属の確認を求めて提訴した。
あてはめ
本件における賃料債権の譲渡は、建物自体の処分ではなく、仮登記の保全対象である所有権移転請求権を害するものではないため、中間処分として否定されるべきものではない。また、上告人は仮登記を経由しているに過ぎず、本登記を了していない。不動産賃貸借において、新所有者が賃貸人の地位を主張するには登記を要するところ、仮登記には対抗力が認められないため、上告人は被上告人に対し、Dから承継した所有権に基づく賃貸人の地位の取得を主張できず、結果として本件賃料債権を取得したとはいえない。
結論
上告人の請求は認められない。仮登記権利者は、本登記を経由する以前の賃料債権の取得を、対抗要件を備えた債権譲受人に対して主張することはできない。
実務上の射程
仮登記の効力(順位保全的効力)が及ぶ「処分」の範囲を限定的に解釈する際、および賃貸人の地位の移転における登記の要否(対抗要件)を論じる際の有力な根拠となる。答案上は、仮登記と中間処分の関係だけでなく、賃貸借の対抗関係における「仮登記」の無力さを指摘する文脈で使用する。
事件番号: 昭和32(オ)62 / 裁判年月日: 昭和34年6月2日 / 結論: 棄却
賃貸人が賃貸借の存続を否定する等、その後の賃料を受領しない意思が明確と認められるときは、賃借人は爾後の賃料につき言語上の提供をしなくても債務不履行の責を負わないものと解すべきである。
事件番号: 昭和44(オ)893 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 棄却
民法三九五条により抵当権者に対抗しうる農地の短期賃貸借の期間が抵当権の実行による差押の効力の生じた後に満了した場合には、賃借人は、農地法一九条による法定更新をもつて抵当権者に対抗できない。
事件番号: 昭和59(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和61年11月18日 / 結論: その他
甲が他から買い受けた建物につき乙名義で所有権移転登記を経由した後これを丙に賃貸してその引渡しを了した場合において、右建物が真実乙の所有であると信じていた丁が、これを乙から買い受けようとした戊に融資をして乙より右建物につき抵当権の設定を受け、その実行により自ら競落人となつて右建物の所有権を取得したときは、丁において右建物…