民法三九五条により抵当権者に対抗しうる農地の短期賃貸借の期間が抵当権の実行による差押の効力の生じた後に満了した場合には、賃借人は、農地法一九条による法定更新をもつて抵当権者に対抗できない。
民法三九五条の短期賃貸借と競売開始後の法定更新
民法395条,民法602条,農地法19条,農地法20条
判旨
抵当権者に対抗し得る農地の短期賃貸借の期間が、競売による差押えの効力発生後に満了した場合、賃借人は農地法上の法定更新をもって抵当権者に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
抵当権設定後に成立した農地の短期賃貸借(旧民法395条)において、抵当権実行による差押え後に期間が満了した場合、農地法19条に基づく法定更新を抵当権者に対抗できるか。
規範
民法395条(旧法)により抵当権者に対抗し得る短期賃貸借であっても、抵当権実行による差押えの効力が発生した後に賃貸借期間が満了した場合には、農地法19条による法定更新の効果を抵当権者(および後の競落人)に対抗することはできない。農地法20条(解約制限等)の規定も、この結論を左右しない。
重要事実
農地の所有者DおよびEが、被上告人のために根抵当権を設定し登記した。その後、Dは上告人A1と、Eは上告人A2と、それぞれ期間を1年とする農地の賃貸借契約を締結し、引渡しを行った。その後、被上告人または後順位抵当権者の申立てにより競売手続が開始され、差押えの効力が発生した。当該差押えの効力発生後、上記各賃貸借契約の期間が満了したため、賃借人である上告人らが法定更新の主張をした事案である。
事件番号: 昭和61(オ)857 / 裁判年月日: 昭和63年2月16日 / 結論: 棄却
抵当権者に対抗することができない農地の賃貸借であつても、所轄農業委員会等により当該賃借人以外の者に競買適格証明書を交付しない取扱いがされているため競買申出人が右賃借人に限定され、その結果、抵当権者に損害を及ぼすときに限り、抵当権者は、民法三九五条但書の準用により右賃貸借の解除を請求することができる。
あてはめ
本件では、根抵当権設定登記の後に賃貸借契約が締結されており、かつ差押えの効力が生じた後に契約期間が満了している。短期賃貸借の保護は、差押え後も契約関係が永続することを保障するものではなく、農地法による法定更新を認めると抵当権の換価価値を不当に阻害することになる。したがって、差押え後に期間満了を迎えた以上、農地法上の更新拒絶の制限等にかかわらず、抵当権者に対しては契約の終了を主張し得ると解される。
結論
上告人らは、農地法上の法定更新をもって抵当権者である被上告人に対抗できず、本件賃貸借契約は期間満了により終了する。
実務上の射程
現在は民法395条の短期賃貸借保護制度が廃止され「抵当建物明渡猶予制度」に移行しているが、農地等の土地賃貸借における抵当権と利用権の優先関係を考える際の基本法理として参照される。差押え後の更新制限の理屈は、現行法下での賃借権の対抗力の限界を論ずる際に応用可能である。
事件番号: 昭和32(オ)791 / 裁判年月日: 昭和35年7月8日 / 結論: 棄却
農地の賃貸借が農地法第一九条により更新されたときは、以後期間の定めのない賃貸借として存続するものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1038 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権設定登記後に登記された民法602条所定の期間を超える賃貸借は、抵当権者に対抗することができず、抵当権者は当該賃貸借の設定がないものとして抵当権を実行し得る。 第1 事案の概要:上告人(抵当権者)は、本件家屋について抵当権を有し、その設定登記を済ませていた。その後、債務者である被上告人らが、本…
事件番号: 昭和44(オ)190 / 裁判年月日: 昭和44年6月3日 / 結論: 棄却
賃貸中の建物につき売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記が経由された後に、仮登記義務者が賃料債権を第三者に譲渡しても、右賃料債権譲渡は、右仮登記に基づく所有権移転の本登記が経由されたことによつて、その効力を否定されるものではない。
事件番号: 昭和59(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和61年11月18日 / 結論: その他
甲が他から買い受けた建物につき乙名義で所有権移転登記を経由した後これを丙に賃貸してその引渡しを了した場合において、右建物が真実乙の所有であると信じていた丁が、これを乙から買い受けようとした戊に融資をして乙より右建物につき抵当権の設定を受け、その実行により自ら競落人となつて右建物の所有権を取得したときは、丁において右建物…