原判決の確定する事実関係(省略)のもとにおいては、弁護士に対し成功報酬金一〇万円の支払契約を締結することにより、依頼者は、一〇万円の債務を負い、したがつて、財産上の損害が現実に生じたものというべきである。
弁護士費用(成功報酬金)の支払契約の締結と損害
民法709条
判旨
不法行為等に基づき生じた損害賠償請求権の要件である「財産上の損害」の発生時期について、現実に金銭を支払っていなくても、成功報酬等の支払義務が確定した時点で現実に損害が生じたものと認められる。
問題の所在(論点)
不法行為や契約上の義務違反に基づく損害賠償請求において、費用の支払債務を負担したものの、未だその支払を完了していない段階で、賠償を請求するための要件である「現実の損害」が発生したといえるか。
規範
損害賠償制度における損害とは、加害行為がなかったならば存在したであろう財産状態と、加害行為後の現在の財産状態との差(差額説)をいう。金銭の支払を目的とする債務を負担した場合、その支払が未了であっても、債務の負担自体が財産上の不利益(マイナスの財産)を構成するため、債務が確定的に発生した時点で「現実に損害が生じている」と解する。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)との関係において発生した紛争等に関連し、第三者との間で成功報酬金10万円を支払う旨の契約を締結した。その後、この成功報酬債務が確定的に発生したが、現実にその金員を支払う前に、上告人に対して当該10万円を損害として賠償請求した。上告人は、未だ支払がなされていない以上、現実の損害は発生していないと主張して争った。
あてはめ
本件において、被上告人は成功報酬金10万円の支払契約を締結している。この契約に基づき、被上告人は10万円の支払債務を確定的に負担することになった。債務を負担することは、その者の純資産を減少させる客観的な財産上の不利益である。したがって、現実に10万円を現金で出捐(支払)していなくても、当該債務の負担により、被上告人には10万円の財産上の損害が現実に生じたものと評価できる。
結論
成功報酬金の支払契約を締結し、債務を負担した時点で現実に財産上の損害が生じていると認められるため、被上告人の請求は認められる。
実務上の射程
弁護士費用や各種成功報酬など、加害行為に対応するためにやむを得ず負担した債務について、支払済みであることを要さず賠償請求できることを示した判例である。答案上では、損害の発生時期や損害の確定性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和41年3月3日 / 結論: その他
共有者は、共有物に対する不法行為によりこうむつた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
事件番号: 昭和25(オ)240 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】時効の援用は訴訟上の防御方法としての性質を有するため、事実審である第二審の口頭弁論終結後にはこれを行うことができない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、特定の物件(目録記載の物件)について取得時効が成立していると主張し、上告審において初めて取得時効の援用を行った。原審(第二審)の口頭弁論終結時…