工事の元請負人甲がその従業員乙を工事の責任者として工事現場に詰めさせ、下請負丙の工事施行を指揮監督させ、かつ、丙の被用者で工事の現場責任者である丁に対しても甲の直接の被用者と同様の指揮監督をしていた場合には、甲は丁がその工事の施行中機械の操作をあやまつた過失によりともに作業をしていた戊に損害を与えた行為につき使用者としての責任を負担する。
下請負人の被用者の加害行為につき元請負人の使用者責任が認められた事例
民法715条
判旨
元請負人が下請負人の被用者に対し、直接の被用者と同様の指揮監督をしていた場合には、当該被用者の不法行為について元請負人は民法715条の使用者責任を負う。
問題の所在(論点)
請負契約関係にある元請負人と下請負人の被用者との間において、民法715条の定める「使用する者」と「被用者」という実質的な指揮監督関係(使用関係)が認められるか。
規範
元請負人が下請負人に対し工事上の指図や監督を行い、その関係が使用者と被用者の関係と同視し得る場合において、下請負人の使用する第三者(再下請負人や被用者等)に対し、直接または間接に元請負人の指揮監督関係が及んでいるときは、当該第三者の行為は元請負人の事業の執行についてなされたものとして、元請負人は民法715条の責任を負う。
重要事実
元請負人である上告会社は、社員である土木技術者Dを工事責任者として現場に常駐させ、下請負人Eの工事施行を指揮監督させていた。その際、DはEの被用者であり現場責任者であったFに対しても、上告会社の直接の被用者と同様に直接的な指揮監督を行っていたが、Fの過失により本件事故が発生した。
あてはめ
上告会社は社員Dを通じて現場で下請負人の施工を監督していただけでなく、下請負人の被用者Fに対して直接の被用者に対するのと同様の指揮監督を行っていた。このような事態においては、Fは上告会社の「被用者と同視すべき」立場にあり、上告会社の事業の執行について過失により事故を惹起したといえる。したがって、元請負人には実質的な指揮監督関係が認められる。
結論
上告会社は、下請負人の被用者Fの過失による事故について、民法715条に基づき使用者責任を負う。
実務上の射程
契約上の雇用関係がなくとも、実質的な指揮監督関係があれば使用者責任が成立することを確認した判例である。答案上は、現場での具体的な指示命令系統の有無や常駐状況から「実質的な指揮監督関係」を認定する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和34(オ)213 / 裁判年月日: 昭和37年12月14日 / 結論: その他
一 元請負人が下請負人に対し工事上の指図をしもしくはその監督のもとに工事を施行させ、その関係が使用者と被用者との関係またはこれと同視しうる場合であつても、下請負人の被用者の不法行為が元請負人の事業の執行につきなされたものとするためには、直接間接に被用者に対し元請負人の指揮監督関係の及んでいる場合に加害行為がなされたもの…