免許を受けて自動車の運送事業を営む者が他人をして違法にその営業名義を使用して自動車運送事業を営ませた場合、名義貸与者とその借受人の事業の執行方法につき原判決確定の事実関係があるときは(原判決理由参照)、名義借受人の雇傭する運転手がその事業の執行に関し第三者に加えた自動車事故による損害について、名義貸与者は賠償責任を負担する。
自動車運送事業の営業名義を貸与した者が名義借受人の雇傭する運転手の過失による自動車事故について損害賠償責任があるとされた事例
民法715条,商法23条
判旨
雇用関係がない場合であっても、客観的にみてある者が他者のためにその事業の執行を代行していると認められる外観が存在するならば、民法715条の「事業の執行について」の要件を充たす。本判決は、事実関係に基づき、雇用関係のない運転者の事故について会社の使用者責任を肯定した。
問題の所在(論点)
直接の雇用契約関係が明確でない場合や、具体的な指揮命令が不明確な状況において、民法715条に基づき「使用者」としての賠償責任を負わせることができるか。
規範
民法715条1項の「事業の執行について」とは、行為の態様が客観的にみて使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合を指す。また、同条の「使用者」との関係については、必ずしも有効な雇用契約が存在することを要せず、客観的にみて他人のためにその事業の執行を代行しているという関係(実質的な指揮監督関係)があれば足りる。
重要事実
上告会社に所属する運転手Eが、自動車事故を起こし被上告人に損害を与えた。上告会社は、Eとの直接の雇用関係や事故当時の業務指示の欠如を理由に責任を否定して争ったが、原審は事実関係に基づき、Eが上告会社の事業を代行する立場にあったと認定した。
あてはめ
原審が認定した事実関係によれば、運転手Eによる自動車の運転は、客観的にみて上告会社の事業の執行としての外観を有していた。このような状況下では、たとえ上告人が主張するような雇用関係の不存在等の事情があったとしても、民法715条の法理が適用されるべき実質的な指揮監督関係または事業代行関係が認められると評価される。したがって、当該事故は「事業の執行について」なされたものといえる。
結論
上告会社は民法715条に基づき、運転手Eが起こした事故による損害を賠償する責任を負う。
実務上の射程
本判決は、使用者責任の成立要件における「使用関係」および「事業執行性」について、契約の有無という形式にとらわれず、客観的・外形的判断を重視する実務上の立場を再確認したものである。答案上では、実質的な指揮監督関係の有無を事実から拾い上げる際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和35(オ)907 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 破棄差戻
測量器械等の販売を業とする会社の商品の外交販売に従事し、仕事上の必要に応じ随時会社の自動車を運転使用できる被用者が会社の自動車を運転して私用に供した場合であつても、これを会社の「事業ノ執行」につきなされたものと認めるのを相当とする。