消極(改正国税徴収法・昭和三四年法律第一四七号施行後の時期における事案)
抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその上の建物が強制競売の結果所有者を異にするにいたつた場合における法定地上権の成否
民法388条
判旨
同一所有者に属する土地及び建物が強制競売により所有者を異にするに至った場合でも、抵当権が設定されていないときは、民法388条を類推適用して法定地上権の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
抵当権の設定されていない土地及び建物が、強制競売によって所有者を異にするに至った場合に、民法388条を類推適用して法定地上権の成立を認めることができるか。
規範
民法388条は、抵当権の設定を前提として法定地上権の成立を認める規定である。したがって、土地及びその地上建物が同一の所有者に属する場合であっても、当該土地又は建物に抵当権が設定されていない状況で、強制競売(一般債権者による差押え等)の結果として所有者を異にするに至った場合には、同条を類推適用して法定地上権の成立を認めることはできない。
重要事実
本件土地とその地上建物は、もともと同一の所有者に属していた。その後、当該土地及び建物には抵当権が設定されていなかったが、強制競売が行われた結果、土地と建物の所有者が分かれることとなった。建物を競落した訴外Dから占有権限を承継したと主張する上告人に対し、土地所有者である被上告人が、所有権に基づき建物の退去及び土地の明け渡しを求めて提訴した。上告人は、民法388条の類推適用により法定地上権が成立していると主張して争った。
事件番号: 昭和47(オ)461 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
消極(改正国税徴収法・昭和三四年法律第一四七号施行後の時期における事案)
あてはめ
民法388条が法定地上権を認める趣旨は、抵当権設定時の当事者の合理的な意思解釈及び社会経済的損失の防止にある。しかし、本件においては、土地・建物のいずれにも抵当権が設定されていなかった。このような場合、一般債権者による強制競売は抵当権の実行とは異なり、あらかじめ法定地上権の成立を予期すべき法的基礎を欠く。したがって、たとえ競売によって所有者が分離したとしても、民法388条の適用場面とは本質的に異なり、同条を類推適用する余地はない。結果として、本件建物には適法な利用権原が認められないこととなる。
結論
法定地上権は成立しない。したがって、土地所有者は無権原の建物占有者に対し、所有権に基づく明け渡しを請求できる。
実務上の射程
法定地上権の成否が問題となる事案において、抵当権設定の有無をまず確認するための基礎的判例として機能する。抵当権が存在しない場合の所有者分離については、特段の事情(借地権設定等)がない限り法定地上権は成立しないという原則を示す際に引用すべきである。答案上は、388条の要件検討の際、前提として抵当権の存在が不可欠であることを示すために活用する。
事件番号: 昭和35(オ)833 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその上の建物が強制競売の結果所有者を異にするにいたつた場合は、民法第三八八条を類推して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。
事件番号: 昭和43(オ)846 / 裁判年月日: 昭和44年2月14日 / 結論: 棄却
抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法三八八条の規定は適用または準用されない。
事件番号: 昭和45(オ)989 / 裁判年月日: 昭和48年9月18日 / 結論: 破棄差戻
土地およびその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合であつても、法定地上権の成立を妨げない。
事件番号: 昭和37(オ)55 / 裁判年月日: 昭和39年3月16日 / 結論: 破棄差戻
改正国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号)施行前に抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその地上建物のうち土地のみが公売によつて競落された場合には、民法第三八八条を類推適用して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。(昭和三五年(オ)第六一一号同三八年一〇月一日第三小法廷判決同旨)