改正国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号)施行前に抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその地上建物のうち土地のみが公売によつて競落された場合には、民法第三八八条を類推適用して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。(昭和三五年(オ)第六一一号同三八年一〇月一日第三小法廷判決同旨)
抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地および地上建物のうち土地のみを公売によつて競落した場合と法定地上権の成否。
民法388条
判旨
土地及びその地上建物の所有者が同一である場合であっても、抵当権が設定されていない土地が公売処分により競落されたときには、民法388条を類推適用して法定地上権の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
抵当権が設定されていない土地・建物が同一所有者に属する場合において、土地が公売処分により第三者の手に渡ったとき、民法388条の類推適用により法定地上権が成立するか。
規範
民法388条の法定地上権は、抵当権の設定を前提とする制度である。したがって、土地及びその地上建物が同一の所有者に属している場合であっても、それらに抵当権が設定されていない状況で土地が公売等により処分された場合には、同条を類推適用して地上建物のために地上権が設定されたとみなすことはできない。
重要事実
被上告人Bは、自己の所有する宅地上に本件家屋を所有し居住していた。右宅地及び家屋にはいずれも抵当権の設定がなされていなかったが、宅地がBの租税滞納により公売処分に付された。上告人は、昭和33年にこの宅地を競落し所有権移転登記を完了した。原審は民法388条を類推適用して法定地上権の成立を認め、上告人の土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求を退けたため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和35(オ)611 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
改正国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号)施行前に抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその地上建物のうち土地のみが公売によつて競落された場合には、民法第三八八条を類推適用して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。
あてはめ
本件において、公売処分の当時、宅地及び家屋のいずれにも抵当権は設定されていなかった。民法388条が法定地上権を認めるのは、抵当権設定時における当事者の合理的な意思や土地利用の調節を目的とするものである。抵当権の介在しない公売処分において、単に土地と建物が同一所有者に属していたという事実のみをもって同条を類推適用し、地上権の成立を認めるべき特段の理由は存在しない。したがって、Bは本件宅地について法定地上権を取得したものとはいえない。
結論
法定地上権は成立しない。民法388条の類推適用を認めた原判決は法令の解釈適用を誤っており、破棄を免れない。
実務上の射程
法定地上権(民法388条)の成立要件である「抵当権の設定」の重要性を確認する判例である。現行の国税徴収法127条1項では、公売による法定地上権の成立が明文化されているが、本判決は同法改正前の事案に対する判断であり、民法の一般原則として「抵当権なき類推適用」を否定する論理を示す際に参照される。
事件番号: 昭和35(オ)833 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその上の建物が強制競売の結果所有者を異にするにいたつた場合は、民法第三八八条を類推して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。
事件番号: 昭和47(オ)461 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 棄却
消極(改正国税徴収法・昭和三四年法律第一四七号施行後の時期における事案)
事件番号: 昭和36(オ)297 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法388条の法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において土地の上に建物が存在することが不可欠である。 第1 事案の概要:上告人(被告)個人の所有名義となっている建物について、被上告人がその権利を主張した。これに対し、上告人は法定地上権の成立や権利濫用等を主張して争った。原審は、挙示された…
事件番号: 昭和35(オ)941 / 裁判年月日: 昭和37年9月4日 / 結論: 棄却
一 同一の所有者に属する土地及びその上に存する建物が同時に抵当権の目的となつた場合においても、民法第三八八条の適用がある。 二 前項の場合には、国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号による改正前のもの)に基づく滞納処分による公売のなされたときにも、民法第三八八条を類推適用すべきである。