土地およびその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合であつても、法定地上権の成立を妨げない。
土地およびその地上建物の所有者が建物の所有権移転登記を経由しないまま土地につき抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
民法177条,民法388条
判旨
土地及びその地上建物が同一の所有者に属する場合、土地への抵当権設定当時に建物について所有権移転登記が未了であっても、民法388条の法定地上権は成立する。抵当権者は現実に建物の存在を了知して土地を評価するのが通例であり、登記の有無は法定地上権の成否を左右しない。
問題の所在(論点)
土地と建物の所有者が同一である場合に土地に抵当権が設定された際、建物について所有権移転登記が経由されていなくても、民法388条にいう「土地及びその地上建物が同一の所有者に属する場合」に該当し、法定地上権が成立するか。
規範
民法388条の法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者に属していることを要するが、建物所有者がその取得登記を経由していることは要しない。本条の趣旨は、競売による建物収去という社会経済上の不利益を防止することにあり、土地抵当権者は現実の建物の存在を前提に評価を行うため、登記の有無にかかわらず法定地上権の成立を予期すべきだからである。
重要事実
上告人A1は、本件建物を買い受けて所有権を取得したが、登記名義は前所有者のままであった。その後、A1は所有する本件土地に被上告人のための抵当権を設定し、その登記を完了した。抵当権実行により被上告人が土地を競落したが、A1及び居住者A2は法定地上権の成立を主張して土地明渡しを拒んだ。原審は、建物登記が未了であることを理由に法定地上権の成立を否定した。
あてはめ
本件では、抵当権設定当時、本件土地と本件建物は実質的にいずれもA1の所有に属していた。法定地上権制度は存立する建物の保護を目的としており、建物所有者が対抗力ある所有権を有している必要はない。抵当権者である被上告人も、土地の現況を確認すれば建物の存在を了知できたはずであり、これを前提に土地を評価すべき立場にある。したがって、建物登記の欠如を理由に法定地上権の成立を否定することは法の趣旨に反する。
結論
建物登記が未了であっても法定地上権は成立する。したがって、法定地上権の成立を否定した原判決には法令の解釈を誤った違法があり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
法定地上権の成否が問題となる答案では、まず本判例を根拠に「登記の有無は問わない」ことを簡潔に記述すべきである。本判例は「同一所有者」の判断において実態を重視する姿勢を示しており、抵当権者の予期に反しない限り、形式的な登記名義よりも実質的な所有関係が優先される場面で広く射程を有する。
事件番号: 昭和41(オ)647 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
土地に対する抵当権の設定当時において地上に建物が存在しなかつた場合には、右抵当権と同一債権の担保を目的として重ねて右土地につき停止条件付代物弁済契約が結ばれた当時には地上に債務者所有の建物が存在したときでも、右代物弁済契約の条件成就後の法律関係につき、民法三八八条の類推適用による法定地上権の成立を認めることはできない。
事件番号: 昭和49(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和50年7月11日 / 結論: 棄却
土地及びその地上の未登記建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合においても、法定地上権の成立を妨げない。
事件番号: 昭和37(オ)55 / 裁判年月日: 昭和39年3月16日 / 結論: 破棄差戻
改正国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号)施行前に抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその地上建物のうち土地のみが公売によつて競落された場合には、民法第三八八条を類推適用して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。(昭和三五年(オ)第六一一号同三八年一〇月一日第三小法廷判決同旨)
事件番号: 昭和44(オ)1014 / 裁判年月日: 昭和45年1月23日 / 結論: 棄却
消極(改正国税徴収法・昭和三四年法律第一四七号施行後の時期における事案)