土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したときは、土地の所有権移転登記を経由していなくても、法定地上権の成立を妨げない。
土地及びその地上建物の所有者が土地につき所有権移転登記を経由しないまま建物に抵当権を設定した場合と法定地上権の成否
民法177条,民法388条
判旨
抵当権設定時、土地及び建物が実質的に同一人の所有に属していれば、土地について所有権移転登記を経由していなくても、民法388条の法定地上権は成立する。
問題の所在(論点)
抵当権設定時に土地と建物が同一人の所有に属していたといえるためには、土地について所有権移転登記が完了している必要があるか。民法388条の「同一の所有者」の意義が問題となる。
規範
民法388条の法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時、土地と建物が「同一の所有者に属する」ことを要するが、その所有権の帰属が実質的に同一であれば足り、土地の所有権移転登記まで備えている必要はない。
重要事実
Dは本件土地とその地上にある本件建物をともに所有していた。Dは本件建物についてE会社のために抵当権を設定したが、本件土地については所有権を取得していたものの、所有権移転登記を経由していなかった。その後、抵当権の実行により、被上告人が本件建物を競落した。
事件番号: 昭和43(オ)1213 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
土地に対し抵当権を設定した当時右土地上に建物がなく、その後に建物が同土地上に建築されるに至つた場合においては、右土地建物が同一の所有者に属するときでも、民法三八八条の規定は適用されない。
あてはめ
本件では、抵当権設定当時、本件土地及び建物のいずれもがDの所有に属していた。土地について所有権移転登記が未了であったとしても、実質的な所有権がDに帰属している以上、土地と建物が同一の所有者に属するという要件を満たす。したがって、抵当権実行により建物所有者となった被上告人のために法定地上権の成立が認められる。
結論
土地について所有権移転登記が経由されていなくても、抵当権設定時に実質的に同一人の所有であれば法定地上権は成立する。
実務上の射程
土地・建物の譲渡が行われたが登記が未了のまま抵当権が設定された事案において、形式的な登記名義ではなく実質的な所有関係を基準に法定地上権の成否を判断する際の根拠となる。対抗要件としての登記の問題と、法定地上権の成立要件としての同一所有者性を区別する意義がある。
事件番号: 昭和35(オ)833 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
抵当権の設定されていない同一所有者に属する土地およびその上の建物が強制競売の結果所有者を異にするにいたつた場合は、民法第三八八条を類推して地上権の設定があつたものとみなすべきではない。
事件番号: 昭和43(オ)846 / 裁判年月日: 昭和44年2月14日 / 結論: 棄却
抵当権設定当時土地および建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地およぴ建物が同一人の所有に帰していても、民法三八八条の規定は適用または準用されない。
事件番号: 昭和49(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和50年7月11日 / 結論: 棄却
土地及びその地上の未登記建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合においても、法定地上権の成立を妨げない。
事件番号: 昭和45(オ)989 / 裁判年月日: 昭和48年9月18日 / 結論: 破棄差戻
土地およびその地上建物の所有者が建物の取得原因である譲受につき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定した場合であつても、法定地上権の成立を妨げない。