日本住宅公団の住宅団地敷地として公団が賃借した借地につき、昭和三一年頃に定めた賃料算出の基準に固定資産評価額の四倍の額を更地適正価額とする旨の約定がある場合であつても、昭和三九年度以降固定資産の評価額がにわかに従来の評価額の五、七倍となつたためその四倍の価額が土地の時価をこえることになる等判示事情があるときは、昭和四〇年六月にされた賃料増額請求の結果増額された相当賃料額の算定にあたり、直ちに前記約定による算出基準をそのまま適用することは、審理不尽の違法がある。
日本住宅公団を借主とする住宅団地敷地の借地契約について地主のした地代増額請求による相当地代額の算定が違法とされた事例
借地法12条
判旨
借地法12条(現:借地借家法11条)に基づく賃料増額請求における相当賃料額の算定は、土地価格の変動等の法定事由のみならず、当初の賃貸借契約の成立経緯や当事者の属性、合意された賃料算出基準の趣旨等の諸般の事情を総合考慮して合理的に決定すべきである。
問題の所在(論点)
借地法12条(現行法11条)に基づく借賃増減請求において、相当な賃料額を算定する際に考慮すべき事情の範囲、および当初合意された特定の算出基準を将来にわたり画一的に適用することの妥当性。
規範
賃料増減請求権の行使により形成される相当賃料額を定めるにあたっては、法所定の諸事由(租税等の増減、地価の変動、近傍賃料との比較等)に限られず、請求当時の経済事情ならびに従来の賃貸借関係、特に当該賃貸借の成立に関する経緯その他諸般の事情を斟酌して、具体的事実関係に即し合理的に定める必要がある。
重要事実
被上告人が土地を上告人(日本住宅公団)等に賃貸した際、当初の賃料は「固定資産評価額の4倍を更地適正価額とする」基準で合意されていた。後に評価額がにわかに約5.7倍に改訂されたため、被上告人は同基準を維持したまま増額を請求。原審は、当初の基準を維持して算定したが、上告人は公団の公共的性格や、評価額の急騰により当初基準の前提が失われたことを主張した。
あてはめ
本件では、賃借人が住宅供給を目的とする特殊法人であり、賃貸人もその性格を了知していたという特段の事情がある。また、当初の「評価額の4倍」という基準は、当時の評価額と時価の乖離を調整するための合意であり、評価額が時価に接近する等の事情変動が生じ、当初の前提(懸隔の程度)が著しく異なった場合には、そのまま適用すべきではない。原審が、地価急騰後の評価額に機械的に当初の「4倍」を乗じて算出したのは、基準の趣旨を誤解し、諸般の事情の斟酌を欠いた審理不尽の違法がある。
結論
増額請求による相当賃料額の算定において、当初の算出基準を機械的に適用することは許されず、事情変更を踏まえた再検討が必要である。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
借地借家法11条に基づく賃料増減額の算定において、スライド法等の特定の算定手法に拘束されず、契約締結の経緯や賃借人の公共性といった「一切の事情」を考慮すべきとする一般原則を示す。司法試験においては、単なる地価変動だけでなく、当事者間の公平の観点から修正を求める際の論拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和37年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法12条(現借地借家法11条1項)の賃料増額請求において、直近の賃料合意が本来合意されるべき適正額よりも低い暫定的なものであった場合には、合意後短期間であっても諸般の事情を考慮して大幅な増額請求が認められる。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は昭和22年に本件宅地を賃料坪10円で賃貸した。…
事件番号: 昭和42(オ)1010 / 裁判年月日: 昭和43年7月5日 / 結論: 棄却
借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合、裁判所は同条所定の諸契機を考量し、具体的事実関係に即し、相当賃料を確定すべきであり、その際、底地価格に利子率を乗ずる算定方法(土地価格の利廻り算定方式)も一つの合理的尺度として使用できるものではあるが、この算定方法が他の合理的算定方法に比して本則であるとまで解すべきものでは…