借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合においては、裁判所は、同条所定の諸契機を考量して相当な賃料を確定すべきであつて、従来の賃料にその後における地価高騰率を乗じてのみ算出しなければならないものではない。
借地法第一二条の賃料増額の基準。
借地法12条
判旨
借地法12条に基づく賃料増額請求における相当賃料額の算定は、従来の賃料に地価高騰率を乗ずる手法に限定されず、近隣の賃料水準等の諸要因を総合的に考量して裁判所が合理的に判定すべきである。
問題の所在(論点)
借地法12条(現・借地借家法11条1項)に基づく賃料増額請求において、相当な賃料額を算定する際、従来の賃料にその後の地価高騰率を乗じて算出する方法に限定されるか、あるいは近隣賃料等の諸事情を総合考慮して判定できるか。
規範
相当な賃料額の算定にあたっては、法に明示された「近隣の土地の地代若しくは借賃」を重要な考量要素としつつ、租税公課の増減、土地価格の上昇、その他の経済事情の変動等の諸要因を総合的に考量して裁判所が合理的に判定すべきである。特定の算出方法(例えば、従前の賃料に地価高騰率を乗ずるスライド法のみ)に拘束されるものではない。
重要事実
賃貸人(上告人)が借地法12条に基づき賃料増額を請求した事案において、第一審判決は、前回の賃料決定後の地価高騰率が1.3倍から2.7倍程度に留まっていたものの、近隣の賃料が坪50円であること、及び従前の賃料が低額であったこと等の諸事情を考慮し、相当な賃料を坪30円と判定した。上告人は、地価高騰率に基づいて算出されるべきであるとして、この判断を不服とした。
あてはめ
本件において、地価高騰率のみに着目すれば増額幅は限定的となるが、法は「比隣ノ土地ノ地代若ハ借賃」を考量すべき一契機として明示している。近隣賃料が坪50円に達している事実に加え、本件の従前賃料が不当に低額であったという個別事情を考慮すれば、単純な地価スライド計算にとらわれず坪30円と判定した原審の判断は、法の趣旨に則った合理的な裁量の範囲内といえる。
結論
従来の賃料に地価高騰率を乗ずる手法にのみよる必要はなく、近隣の賃料水準等の諸事情を総合考慮して相当賃料を算定すべきである。原審の判断に違法はない。
実務上の射程
賃料増減額請求権(現行法11条、32条)の行使に伴う「相当賃料」の算定手法に関する基礎判例。実務上の算定(差額配分法、利回り法、スライド法、比準法)において、特定の算定手法が絶対的なものではなく、事案に応じた総合考慮が許容されることを示す際に引用する。
事件番号: 昭和39(オ)1157 / 裁判年月日: 昭和40年12月9日 / 結論: その他
増額の合意または増額請求の意思表示があつたことの認定のないまま増額賃料による請求を認容した判断には、理由不備の違法がある。