増額の合意または増額請求の意思表示があつたことの認定のないまま増額賃料による請求を認容した判断には、理由不備の違法がある。
賃料増額の判断に理由不備があるとされた事例
民訴法395条1項6号
判旨
賃料増額請求権が行使されたといえるためには、当事者間での合意があるか、あるいは増額請求の意思表示がなされることが必要である。
問題の所在(論点)
賃料増額請求(旧借地法12条、現借地借家法11条1項参照)において、客観的に相当な賃料額が算定されるだけで増額の効果が生じるのか。増額の効果が発生するための要件が問題となる。
規範
借地借家法(または旧借地法・旧借家法)に基づく賃料増額の効果が発生するためには、形成権の行使として、賃料を増額する旨の明確な意思表示(増額請求の意思表示)がなされるか、あるいは当事者間において増額に関する合意が成立していることを要する。
重要事実
本件土地の賃料について、原審は昭和38年度(坪当たり月額30円)および昭和39年度(同40円)の賃料額を相当と認め、その額まで賃料が増額されたと判断した。しかし、昭和38年1月1日以降の当該増額に関して、賃貸人と賃借人の間で合意があった事実、あるいは賃貸人から増額請求の意思表示がなされた事実については、判示されていなかった。
あてはめ
本件では、原審が相当賃料額を認定したのみで、法的効果を発生させるために不可欠な「増額の合意」または「増額請求の意思表示」の存否について審理・判断を尽くしていない。賃料は私法上の契約に基づくものである以上、形成権の行使という法律上の要件を欠いたまま、裁判所が相当額を認定するだけで当然に増額後の賃料債権を認めることはできない。
結論
増額の合意または増額請求の意思表示の存否を判示せずに賃料請求を認容した原判決には、理由不備および審理不尽の違法がある。したがって、当該部分は破棄を免れない。
実務上の射程
賃料増額請求事件の答案において、請求の始期(どの時点から増額後の賃料を請求できるか)を論じる際に活用する。客観的に賃料が不相当であっても、意思表示が到達した時点からしか増額効果が生じないことを示す根拠となる。
事件番号: 昭和40(オ)254 / 裁判年月日: 昭和40年11月30日 / 結論: 棄却
借地法第一二条による賃料増額請求があつた場合においては、裁判所は、同条所定の諸契機を考量して相当な賃料を確定すべきであつて、従来の賃料にその後における地価高騰率を乗じてのみ算出しなければならないものではない。