一個の土地賃貸借契約の目的たる土地の一部に賃料統制がある場合、目的土地全体に対し賃料増額の意思表示をなしたときは、賃料統制のある土地部分に限り統制賃料を超えて増額の効果を生じないが、右増額の意思表示が一個の行為である理由をもつて直ちに右意思表示全体を無効としなければならないものではない。
一個の土地賃貸借契約の目的たる土地の一部に賃料統制のある場合と目的土地全体に対する賃料増額の意思表示の効力。
借地法12条
判旨
1個の土地賃貸借において、賃料統制額のある部分とない部分が混在する場合、一律の増額意思表示は統制額を超える範囲で無効となるが、意思表示全体が直ちに無効となるわけではない。
問題の所在(論点)
1個の土地賃貸借契約において、賃料統制の対象部分と非対象部分が混在する場合、一律になされた賃料増額の意思表示の効力はどうなるか。特に、一部が統制額を超過することをもって意思表示全体が無効となるか。
規範
1個の土地賃貸借契約の目的物に、賃料統制額のある土地部分とそれのない土地部分が混在する場合、一律の賃料増額の意思表示は、統制額のある土地部分については統制賃料を超える限度で効力を生じない。しかし、当該増額の意思表示が1個の行為であることを理由として、直ちにその全体が無効となるものではない。
重要事実
土地賃貸人(上告人)は、1個の賃貸借契約に基づき複数の土地(イ、ロ、ハ)を賃貸していた。土地(ロ)には建物居住者の物干や便所が設置された空地が含まれており、地代家賃統制令の適用を受ける部分と、そうでない部分が混在していた。賃貸人は、これら土地全部について一律に1坪当たりの賃料額を明示した上で賃料増額の意思表示を行ったが、賃借人側が、統制額を超える部分を含む1個の増額意思表示は全体として無効であると主張して争った。
あてはめ
本件において、土地(ロ)全体に地代家賃統制令の適用があるか否かは、建物の利用に供されている実態から判断されるべきであり、空地部分も建物居住者の便益に供されている以上、一体として統制令の適用を受ける。増額の意思表示が1個の行為としてなされた場合であっても、それがどの土地部分を対象とするものであるか客観的に認識可能であれば、可分的に解釈することが可能である。したがって、統制額の制限を受ける部分において超過額が無効になることはあっても、制限を受けない他の土地部分(イ、ハ)や統制額の範囲内における増額までもを一律に無効とする必要はない。
結論
賃料増額の意思表示は、統制賃料を超える限度で無効となるにとどまり、全体が無効となるものではない。したがって、統制額の範囲内および統制を受けない部分については増額の効力が認められる。
実務上の射程
法令による価格制限(統制額)がある債権の一部について制限超過が生じた場合、公序良俗違反(民法90条)や一部無効(民法111条、現112条)の理を応用し、可能な限り有効部分を維持しようとする実務上の指針となる。答案上は、賃料増額請求等の形成権行使において、請求額の一部が不当であっても全体が無効にならないとする文脈で活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)452 / 裁判年月日: 昭和37年10月26日 / 結論: 棄却
一 一棟二戸建の建物を同一の賃借人が一戸づつ各別の契約で賃借した場合において、二戸の合計面積が三〇坪をこえても各戸の面積がいずれも三〇坪以下であるときは、地代家賃統制令第二三条第二項第三号にいう建物を賃借した場合にあたらない。 二 地代家賃統制令にいわゆる「店舗」ないし「倉庫」であるか否かは、建物の外形や構造によつて機…