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原判決に裁判の脱漏がある場合に、原審にさらに職権をもつて追加判決をすべき旨付加判示して、上告を棄却した事例
民訴法195条
判旨
農地法上の許可を欠く農地の権利移転の無効は、当事者の主張を待たず裁判所が職権で判断できる法律問題である。また、裁判所が判決理由中で請求を理由なしと判断しながら主文で判断を漏らした場合は、裁判の脱漏として追加判決を要する。
問題の所在(論点)
1.農地法上の許可を欠く農地譲渡の無効について、当事者の主張がない場合でも裁判所は判断できるか。2.判決理由で請求を否定しながら主文で判断を漏らした場合の法的性質と処理はどうあるべきか。
規範
1.農地法3条1項所定の知事の許可を受けない農地の所有権移転(信託的譲渡を含む)は、強行法規違反として当然に無効である。2.当該無効の判断は法律判断であるため、弁論主義の適用を受けず、当事者の主張がなくても裁判所が職権で判断することができる。3.判決理由中で請求の拒絶を明示しながら主文で言及を欠く場合は、裁判の脱漏(民事訴訟法258条)に該当する。
重要事実
被上告人と訴外Dとの間で、農地について信託的所有権譲渡が行われたが、農地法上の知事による許可を得ていなかった。原審は、この譲渡について被上告人からの明示的な無効の主張がないにもかかわらず、許可がないことを理由に無効であると判断した。また、原審は理由中で上告人の一部農地の引渡請求等を理由がないと判断したが、主文においてその請求部分に対する棄却の判断を記載しなかった。
事件番号: 昭和40(行ツ)17 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
農地の所有者から賃借権等の設定を受け現に当該農地を耕作している者であつても、右賃借権等の設定について農業委員会の許可を受けていない以上、当該農地の所有権移転につき知事が第三者に与えた許可処分の無効確認を求める原告適格を有しない。
あてはめ
1.農地法上の許可の有無は、農地の権利移転の効力を左右する強行法規上の要件である。したがって、被上告人による無効の主張がなくても、裁判所は証拠に基づき当該譲渡を無効と法律判断できる。2.本件において、原審は一部農地の引渡請求を理由なしと判示している。それにもかかわらず主文でこれに対する判断を示さないことは、完結すべき訴訟の一部について判断を遺脱したもの(裁判の脱漏)といえる。
結論
1.裁判所は当事者の主張がなくても、許可を欠く農地譲渡を無効と判断できる。2.判断が漏れた部分については、裁判の脱漏として職権による追加判決が必要である。
実務上の射程
農地法の許可のような効力規定・強行規定に関しては、当事者の援用を待たず裁判所が判断できることを示す。また、理由と主文の不一致が「理由の不備」ではなく「裁判の脱漏」とされる場合の具体例として、訴訟法上の実務指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)597 / 裁判年月日: 昭和33年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、登記簿上の所有者を対象とした処分は、真実の所有者と異なる場合であっても、所定の不服申立手続を経て確定した以上、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:農地委員会は、登記簿上でD名義となっていた農地につき、Dが不在地主であるとして買収計画を樹立し、昭和…
事件番号: 昭和41(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和42年7月21日 / 結論: 棄却
地方公共団体の技術吏員は、知事から、その権限に属する事務の一部を特定して、委任をうけ、または授権された場合にかぎり、自己の名においてまたは知事を代理して、知事の権限を行使することができる。
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…