所有権に基づく登記請求を認容した確定判決は、その理由において所有権の存否を確認している場合であつても、所有権の存否について既判力およびこれに類似する効力(いわゆる争点効)を有するものではない。
所有権に基づく登記請求を認容した確定判決と所有権の存否についての既判力およびこれに類似する効力の有無
民訴法199条
判旨
建物明渡請求訴訟等の既判力は、訴訟物である明渡請求権等の存否についてのみ生じ、その前提となる所有権の存否には及ばない。また、わが国の法制下では争点効(既判力に類似する効力)は認められない。
問題の所在(論点)
建物明渡請求等の確定判決の既判力は、その前提となる権利関係(所有権の存否)や、判決理由中の判断について生じるか。また、争点効は認められるか。
規範
既判力は、判決主文に掲げられた訴訟物についての判断についてのみ生じ、判決理由中の判断には生じない。また、判決理由中で判断された主要な争点について後訴での反論を禁じる「争点効」については、これを認めるべき法的根拠がなく否定される。
重要事実
上告人は被上告人に対し、本件不動産の売買契約に基づく建物明渡および損害賠償を求め、被上告人の詐欺取消の抗弁を排斥して勝訴判決を得た(別件訴訟)。その後、被上告人が上告人に対し、右契約の詐欺取消を理由とする所有権に基づく登記抹消請求を提起した(本件訴訟)。上告人は、別件訴訟の確定判決により売買契約の有効性や所有権の帰属が既に確定していると主張した。
事件番号: 昭和26(オ)113 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 破棄差戻
調停により取得した不動産の二分の一の共有持分権に基く分割請求権があることを原因として提起した共有物分割請求訴訟において、その請求を棄却した確定判決の既判力は、判決の理由において、共有権の存否につき判断をしている場合であつても、右の調停により共有持分権を取得したかどうかの点までは及ばない。
あてはめ
別件訴訟の訴訟物は、建物明渡請求権および損害賠償請求権の有無である。判決理由中で売買契約が有効(=上告人の所有)と判断されていても、それは主文の判断を導くための理由にすぎない。一方、本件訴訟の訴訟物は登記抹消請求権の有無であり、別件の訴訟物とは別個である。したがって、別件判決の既判力は本件の訴訟物には及ばず、争点効も否定される以上、本件訴訟で所有権の存否を改めて争うことは妨げられない。
結論
別件訴訟の既判力は、本件不動産の所有権の存否には及ばない。上告人の上告を棄却する。
実務上の射程
既判力の範囲(民訴法114条1項)を訴訟物に限定する原則を徹底した判例である。答案上は、理由中の判断に拘束力を認めたい場合に、信義則(民訴法2条)を用いる余地はあるものの、原則として「争点効」の成立を否定し、既判力の客観的範囲を厳格に画定する際に引用する。
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
事件番号: 昭和32(オ)340 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権に基づく建物明渡請求訴訟において、請求棄却判決が確定したとしても、被告の所有権の存在については既判力は生じない。 第1 事案の概要:原告(上告人)が被告に対し、所有権に基づき建物の明渡しを求めて提訴した。これに対し被告側は、別訴において原告の請求を棄却する判決が確定していることを理由に、当該…
事件番号: 昭和41(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
不動産の買主がその売主に対してなしたいわゆる処分禁止の仮処分がある場合に、右不動産の他の買主が同一不動産について第二次の処分禁止の仮処分をすることは妨げられないが、第一次仮処分の債権者が、被保全権利の実現として、右売買契約に基づく所有権移転登記を経由したときは、第二次仮処分の債権者は、自己の仮処分の効力を主張して右所有…
事件番号: 昭和31(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年8月26日 / 結論: 棄却
一 後見人の職務執行停止の仮処分命令において、後見人に対する職務執行停止の効力はその命令正本が当該後見人に送達されたときに生ずる。 二 甲所有の不動産を、その後見人乙が代理して丙に譲渡し、乙の職務執行停止の仮処分がなされた後乙は丙のために移転登記をなし、ついで丙は同不動産を丁に譲渡し移転登記をした場合に、甲は丁に対して…