所有権移転登記申請手続が登記義務者の意思に基づいてなされたものである以上、代理人による登記申請書に適式の代理委任状その他代理権限を証する書面が添付されなかつたことの一事によつて、右登記が効力を生じえないと解すべきものではない。
代理人による登記申請と委任状
不動産登記法35条1項
判旨
代理人による登記申請において、適式の代理委任状等の添付を欠く手続上の不備があったとしても、登記義務者の真実の意思に基づく申請である以上、その登記の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
不動産登記法上の形式的要件(代理権限証書の添付等)を欠く登記申請によってなされた登記について、登記義務者の意思に基づくものであれば有効といえるか。
規範
登記の有効性は、実体上の権利関係に合致するか否か、および登記義務者の真実の意思に基づくか否かによって決せられる。したがって、代理人による登記申請手続において、代理権限を証する書面の添付を欠くという形式上の不備がある場合でも、登記義務者の意思に基づく申請によりなされた登記である限り、その登記は有効である。
重要事実
本件建物の所有権が登記義務者Dから被上告人へ移転し、被上告人名義の所有権移転登記がなされた。この登記申請は代理人によって行われたが、申請時に適式の代理委任状その他の代理権限を証する書面が添付されていなかった。しかし、本件登記の申請自体は、登記義務者であるDの真実の意思に基づいて行われたものであった。
あてはめ
本件において、登記申請時に代理委任状等の適正な書面が欠落していたことは事実である。しかし、原審の認定によれば、当該登記は登記義務者Dの真実の意思に基づくものであった。登記制度の目的は公示の正確性確保にあるところ、形式的不備があったとしても、登記義務者の意思に基づくものであれば、実体的な権利変動を正当に反映したものと評価できる。したがって、添付書類の欠如という一事をもって、直ちに当該登記を無効と解すべき根拠はない。
結論
適式の委任状等を欠く登記申請であっても、登記義務者の意思に基づくものであれば、その登記は有効である。
実務上の射程
登記手続の形式的瑕疵(代理権限証書の欠缺)と実体上の効力の関係を示す判例である。答案上は、登記の有効性を争う場面において、申請手続の不備を理由とする無効主張に対する再反論として、「実体関係への合致」または「登記義務者の意思」を重視する立場を基礎付ける際に活用できる。
事件番号: 昭和46(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: 破棄差戻
一、不動産の賃借人は、賃貸人からその不動産の所有権の譲渡を受けたと主張する者との関係においては、民法一七七条にいう第三者に該当する。 二、不動産登記法七八条五号及び九一条一項六号の各規定による所有権の登記は、民法一七七条所定の登記に該当しない。