判旨
簡易裁判所における訴えの追加的・予備的変更は、書面を提出することなく口頭で陳述し、相手方が異議を述べない場合には適法に成立する。裁判所がこの予備的請求について認定判断を怠ることは、判決に影響を及ぼす重大な違法(判断遺脱)となる。
問題の所在(論点)
簡易裁判所において口頭でなされた訴えの予備的変更の適法性と、当該請求に対する判断を失念した場合の裁判上の瑕疵。
規範
簡易裁判所の手続においては、民事訴訟法上の訴えの変更(追加的・予備的変更)は、書面の提出を要せず口頭で行うことができる(民訴法271条参照、旧353条)。また、適法になされた予備的請求に対し、裁判所が認定判断をしないことは、理由不備または判断遺脱として破棄事由となる。
重要事実
上告人は、当初「賃貸借契約終了による建物明渡」を請求していたが、第1審(簡裁)の口頭弁論において、予備的に「所有権に基づく不法占有を原因とする建物明渡」を口頭で追加した。被上告人はこれに対し異議を述べず、その後は所有権の帰属について主張立証が尽くされた。しかし、原審(控訴審)は、賃貸借関係の成否のみを判断し、予備的請求について判断を示さなかった。
あてはめ
本件では、簡裁の口頭弁論において上告人が所有権に基づく請求を口頭で陳述し、被上告人が異議なく応じている。簡裁特有の口頭主義に基づけば、書面がなくとも訴えの変更は適法に成立している。記録上、当事者は所有権の帰属を主たる争点として争っており、審理の対象となっていたことは明らかである。それにもかかわらず、原審がこの予備的請求について判断を遺脱したことは、判決に影響を及ぼす違法があるといえる。
結論
訴えの変更は適法であり、予備的請求に対する判断遺脱があるため、原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
簡易裁判所における手続の簡略化・口頭主義を認めた事例である。答案上は、訴えの変更の方式(原則:書面)の例外としての簡裁手続の特則を確認する際に有用である。また、予備的併合において主位的請求を排斥しながら予備的請求に触れないことが、直ちに判断遺脱(民訴法312条2項6号参照)を構成することを示す実務上の基礎となる。
事件番号: 昭和34(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和35年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物として完成していない時点での保存登記及びそれを基礎とした仮登記は、実体上の所有権関係を反映しないため無効である。また、公文書の成立の真正が推定されても、その記載内容の真実性は事実審の自由心証に委ねられる。 第1 事案の概要:昭和28年12月26日、本件家屋について株式会社D建設を所有者とする保…