判旨
建物として完成していない時点での保存登記及びそれを基礎とした仮登記は、実体上の所有権関係を反映しないため無効である。また、公文書の成立の真正が推定されても、その記載内容の真実性は事実審の自由心証に委ねられる。
問題の所在(論点)
1.独立の建物として存在しない段階でなされた保存登記、及びその保存登記を基礎とする仮登記の効力。 2.公文書の成立の真正が推定される場合(形式的証拠力)、その記載内容の真実性(実質的証拠力)を否定する事実認定が可能か。
規範
1.保存登記時において対象物が独立の建物として存在せず、かつ登記名義人が所有権を取得した事実がない場合、当該登記及びこれを基礎とする仮登記は無効である。 2.公文書(民事訴訟法228条4項、旧323条1項)の成立の真正が推定されても、その記載内容の真実性は実質的証拠力の問題であり、裁判所の自由心証(同法247条)により他の証拠や当事者本人の供述に基づき、記載と異なる事実を認定できる。
重要事実
昭和28年12月26日、本件家屋について株式会社D建設を所有者とする保存登記がなされ、翌年1月9日にはこれを基に上告人のための仮登記がなされた。しかし、当該保存登記の時点において、本件家屋はいまだ独立の建物として存在しておらず、またD建設が本件家屋の所有権を取得した事実もなかった。
あてはめ
1.本件家屋は保存登記当時、独立の建物としての実態を備えていなかった。不動産登記は実体関係を公示するものであるから、対象物が存在せず、かつ名義人が所有権を有しない以上、当該保存登記は無効である。よって、無効な登記を基礎とする仮登記も同様に無効といえる。 2.公文書の推定規定は成立の真正を定めるにすぎない。裁判所は、当事者の供述を含む他の証拠を総合的に評価し、自由な心証によって記載内容とは異なる事実を認定できるため、本件の事実認定に違法はない。
結論
保存登記及び仮登記はいずれも無効。公文書の記載内容と異なる事実認定をなした原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
登記の有効性が実体関係(建物の完成・所有権の帰属)に依存することを明示した事案。また、証拠法上、公文書の形式的証拠力と実質的証拠力を峻別し、後者が自由心証に属することを再確認する際に活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)1083 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
家屋台帳の記載上、所有者が当初から原告である旨記載されている以上、反証なきかぎり、その記載内容は真実であると推定すべきものであつて、昭和一九年四月建築したものが、昭和二一年一〇月にその新築申告がなされ、その間相当の隔りがあるというだけのことで、右の推定を覆すに足りる反証とすることはできない