根抵当権設定登記および停止条件付所有権移転請求権保全の仮登記の登記原因の日付が真実に合致しない場合においても、判決および原審判決事情のもとにおいては、無効と解すべきではない。
登記原因の日付が真実に合致しない場合における登記の効力。
不動産登記法2条2号,不動産登記法35条1項2号,不動産登記法36条1項4号,不動産登記法117条
判旨
建物取毀後に新築された建物につき、旧建物に関する特約の内容を承継させる合意がある場合、登記原因の日付が真実に合致しなくても、当該登記を無効と解するのは相当ではない。
問題の所在(論点)
旧建物の取毀・新築に伴い、新旧建物を入れ替える特約がなされた場合において、登記原因の日付が実体上の合意形成日と異なる登記の効力(対抗力)。
規範
不動産登記の有効性は、登記が現在の権利状態に合致しているか否かによって判断される。登記原因の日付等の記載に一部真実と異なる点があったとしても、その登記が当事者間の実体的な合意に基づく権利関係を公示するものである限り、直ちにその登記を無効とすべきではない。
重要事実
債務者Dは旧建物を取毀し、その跡地に本件建物を新築した。その際、債権者F信用金庫との間で、新築建物をもって旧建物に代え、既往の契約に基づく債務のために根抵当権を設定し、弁済がないときは代物弁済として所有権を移転する旨の特約を結んだ。その後、本件建物に根抵当権設定登記および仮登記が経由されたが、その原因日付は旧建物についての契約日である昭和28年2月10日と記載されていた。上告人は、当該登記は新築建物に関する真実の特約を反映していないため、権利の取得を対抗できないと主張した。
あてはめ
本件では、旧建物の取毀および本件建物の新築に際し、新築建物を旧建物の代わりとして既往債務の担保に供する旨の明確な特約が当事者間で成立している。本件建物に付された登記は、この特約に基づく権利を公示する目的でなされたものである。登記原因の日付が「昭和28年2月10日」とされ、真実の合意日(新築時)と整合しない点はあるものの、現在の権利関係(F金庫が本件建物に担保権等を有する実態)を公示しているといえる。したがって、実体上の権利関係と概ね合致する以上、公示としての効力を認めるのが正当である。
結論
登記原因の記載に一部不実があっても、現在の実体的な権利関係を公示している限り、その登記は有効であり、これをもって第三者に対抗することができる。
実務上の射程
登記の有効性に関する「実体合致の原則」を具体化した事例である。答案上は、登記原因や日付の不一致が問題となる場面で、当事者間に当該登記を支える実体的な合意(本件では建物の入れ替え特約)があることを指摘し、公示の機能を果たしていると論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和35(オ)839 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
甲が乙名義の建築確認通知書の「建築主の住所氏名欄」の記載を、乙の諒解を得たのみで甲名義に訂正し、家屋台帳に自ら所有者として登録し、右台帳に基づき所有権保存登記を経由した場合においても、実体上甲が所有権を有するときは、該登記は無効とはいえない。