一 会社の行為がその目的遂行に必要であるかどうかは、定款記載の目的自体から観察して、客観的に抽象的に必要であり得るかどうかの基準に従つて決すべきである。 二 会社がその所有家屋を売却する行為は、「不動産の保存、その他財産を保存してこれが運用利殖を計ること」という目的遂行に必要であり得る。 三 会社の目的自体に包含されない行為であつても、目的遂行に必要な行為は、目的の範囲内に属する。
一 会社の目的遂行に必要な行為を定める基準 二 会社の目的遂行に必要であり得る行為の一事例 三 会社の目的の範囲
民法43条
判旨
法人の権利能力の範囲(定款記載の目的の範囲内)は、目的達成のために現実的に必要か否かではなく、定款に記載された目的から客観的・抽象的に判断すべきである。
問題の所在(論点)
民法34条(および法人通則法等)にいう法人の「目的の範囲内」の行為か否かの判断基準、および取引の安全との関係が問題となる。
規範
法人の目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に包含される行為のみならず、その目的遂行に必要な行為をも含む。そして、目的遂行に必要か否かは、当該行為が目的に対して現実に必要であったかという具体的基準ではなく、定款の記載自体から観察して、客観的・抽象的に必要であり得るかという基準に従って決すべきである。
重要事実
不動産等の保存・運用利殖を目的とするD社団の無限責任社員の代理人Gが、社団所有の建物および宅地を上告人に売却した。原審は、当該売却について他の社員の同意がなく、かつ目的遂行上の現実的な必要性も認められないとして、目的の範囲外の行為であり無効であると判断した。
あてはめ
D社団の目的は不動産の保存・運用利殖である。財産の運用利殖のためには、既有財産を売却することもその一方法として客観的に想定され得る。現実の必要性は社団内部の事情であり、第三者がこれを知ることは困難である。取引の安全の観点からすれば、客観的・抽象的に観察して目的達成のために必要となり得る行為であれば、目的の範囲内に属すると解するのが相当である。
結論
本件建物の売却は、社団の目的である財産の保存・運用利殖のために抽象的に必要となり得る行為であり、目的の範囲内の行為として有効である。原判決を破棄し、差戻す。
実務上の射程
法人の権利能力を画する「目的の範囲」を広汎に認め、取引相手方の調査負担を軽減して取引の安全を図る重要判例である。答案上は、定款の文言から形式的に判断するのではなく、その目的から「客観的・抽象的に必要か」という規範を明示し、具体的な必要性の有無を問わない点を強調すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)24 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
他人の賃借居住中の家屋を買い受けた者の賃貸借の解約申入も、後記事由(第二審判決理由参照)があるときは、正当の事由がある。