控訴審判決主文において物件を表示するにつき、第一審判決に掲げる物件の表示を引用することは差し支えない。
控訴審判決主文における第一審判決引用の可否。
民訴法391条,民訴法191条1項
判旨
会社の目的の範囲内の行為であるか否かは、定款に定められた目的から直接的・間接的に必要とされる一切の行為を含むものと解されるところ、製薬会社による建物の買入れは同社の目的の範囲内に属する。
問題の所在(論点)
製薬会社が建物を買い入れる行為が、会社法(旧商法)上の「目的の範囲内」の行為として認められ、会社の権利能力に属するか。
規範
会社の権利能力(目的による制限)について、その目的の範囲内には、定款に明示された目的達成のために直接または間接に必要、あるいは有益な一切の行為が含まれる。行為が客観的に見て目的達成に資する性質を有するものであれば、その目的の範囲内に属すると解すべきである。
重要事実
訴外D製薬株式会社は、訴外Eから本件家屋(居宅および工場等を含む)をその敷地とともに代金32万円で買い受けた。これに対し、上告人は、当該建物の買入れ行為がD製薬の目的の範囲外の行為であり、無効である旨を主張して争った。
あてはめ
D製薬の事業目的は製薬業であるところ、製薬業務を遂行するにあたっては、工場や事務所としての施設を確保することが必要不可欠である。本件で買い入れられた物件は、木造の工場や居宅等を含む建物一式であり、製薬会社の事業運営という客観的な性質に照らせば、目的達成のために直接・間接に資する行為であるといえる。したがって、定款所定の目的の範囲を逸脱するものとはいえない。
結論
本件建物の買入れはD製薬株式会社の目的の範囲内であり、当該行為は有効である。
実務上の射程
民法34条や会社法に関連する「目的の範囲」の解釈において、八幡製鉄事件判決等と同様に、目的達成に「直接または間接に必要な一切の行為」を含むとする広義の解釈を維持している。答案上は、事業目的と当該行為(不動産取得等)の関連性が薄く見える場合であっても、客観的な性質から必要性を導く論法として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)256 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
一 無尽業法第一〇条の規定は、行政上の取締規定であつて、これに違反する資金運用行為そのものの無効をきたさない。 二 定款所定の目的そのものに該当しない金員貸付行為であつても、これが客観的、抽象的にみて、右の目的遂行に必要な行為であると解されるかぎり、相互銀行の目的の範囲内の行為というを妨げない。