一 無尽業法第一〇条の規定は、行政上の取締規定であつて、これに違反する資金運用行為そのものの無効をきたさない。 二 定款所定の目的そのものに該当しない金員貸付行為であつても、これが客観的、抽象的にみて、右の目的遂行に必要な行為であると解されるかぎり、相互銀行の目的の範囲内の行為というを妨げない。
一 無尽義務第一〇条違反の効力 二 金員貸付行為と相互銀行の目的の範囲
無尽業法10条,無尽業法39条,民法91条,民法43条
判旨
会社の目的の範囲内といえるかは、定款所定の目的達成に必要であれば足り、客観的・抽象的に判断される。また、無尽業法10条等の資金運用規制は行政上の取締規定にすぎず、これに違反する貸付行為であっても私法上の効力は妨げられない。
問題の所在(論点)
1. 定款所定の目的に「貸付」が含まれていない場合、当該貸付行為が「目的の範囲内」の行為として有効といえるか。 2. 業法(無尽業法)上の資金運用規制に違反する貸付行為の私法上の効力はどうなるか。
規範
1. 会社の目的の範囲内の行為(会社法2条1号等)とは、定款に明示された目的自体に限定されず、その目的を遂行するために直接または間接に必要であれば足りる。その判断は、行為の具体的・主観的な意図ではなく、客観的・抽象的にみて目的遂行に必要か否かによって決する。 2. 業法等による制限規定(無尽業法10条等)は、行政上の取締規定であって私法上の効力を規定するものではないため、これに違反する行為であっても直ちに私法上無効となるものではない。
重要事実
無尽業および住宅金融公庫の業務受託を目的とする会社(被上告人)が、金銭の貸付を行った。これに対し、債務者側(上告人ら)が、当該貸付は定款所定の目的の範囲外であり、かつ無尽業法10条の資金運用規制や6条の兼業禁止に違反するため、私法上無効であると主張して争った事案である。
あてはめ
1. 定款所定の目的が土地建物の給付や業務受託であっても、資金の運用としての貸付は、客観的・抽象的に見れば会社の目的遂行に必要な行為といえる。したがって、本件貸付は目的の範囲内に属する。 2. 無尽業法10条が定める資金運用の規制は、取締上の見地からなされたものであり、違反者には過料の制裁があるものの、私法上の効力まで否定する趣旨ではない。また、反復継続的な意図をもって行われた証拠もないため、兼業禁止規定にも抵触しない。
結論
本件貸付は会社の目的の範囲内の行為であり、かつ業法違反を理由とする私法上の無効も認められないため、貸付行為は有効である。
実務上の射程
会社法上の「目的の範囲」を広く捉える八幡製鉄事件判決等と同様の法理を示す。特に、業法上の規制に違反したとしても、それが強行規定ではなく取締規定である限り、契約の私法上の効力は維持されるという構成は、実務上の基本論理として重要である。
事件番号: 昭和33(オ)1000 / 裁判年月日: 昭和36年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】暴利行為が民法90条の公序良俗に反して無効となるかは、相手方の窮迫・軽卒・無智に乗じたか否か等の諸事情を総合して判断されるべきであり、単に事実関係を争うのみでは公序良俗違反を基礎付けられない。 第1 事案の概要:上告人と訴外Dとの間で締結された約定について、上告人は当該約定が自らの窮迫、軽卒、無智…