土地区画整理事業による建物移転の直接施行が完了したときは、当該建物の移転通知を争う訴えの利益は失われる。 (参照) 神戸地方昭和四〇年(行ウ)第一八号、昭和四〇年(行ウ)第二〇号昭和四〇年一二月二日判決、行裁集第一六巻一二号二〇二七頁〔一三七〕 大阪高等昭和四一年(行コ)第二号昭和四一年一一月二九日判決、行裁集一七巻一一号一三〇七頁〔一〇一〕
土地区画整理事業による建物移転の直接施行の完了と建物移転通知を争う訴えの利益
土地区画整理法77条2項,行政事件訴訟法9条
判旨
土地区画整理法に基づく建物移転通知を受けた者がその取消しを求める訴えについて、建物移転の直接施行が完了した後は、当該通知の取消しによって阻止すべき事態が既に消滅しているため、訴えの利益を失う。
問題の所在(論点)
建物移転通知の取消しを求める訴えにおいて、通知に基づく直接施行(建物の移転工事)が完了した場合、行政事件訴訟法9条にいう「訴えの利益」は失われるか。
規範
取消訴訟の提起には、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が必要である(行政事件訴訟法9条1項)。処分の性質上、その執行により目的が達せられ、取消しによって原状を回復することが不可能な場合や、取消しにより阻止すべき法的効果が既に消滅した場合には、特段の事情がない限り訴えの利益は消滅する。なお、行政処分の違法を理由とする国家賠償請求については、あらかじめ当該処分の取消判決を得る必要はない。
重要事実
上告人は、土地区画整理法77条2項に基づく建物移転通知を受けたが、その取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟進行中に当該通知に基づく建物の移転工事(直接施行)がすべて完了した。このため、移転完了後もなお通知の取消しを求める訴えの利益があるかが争点となった。
事件番号: 昭和41(行ツ)77 / 裁判年月日: 昭和48年2月2日 / 結論: 破棄自判
土地区画整理法一〇三条による換地処分がなされたときは、右処分における従前の宅地についてなされた仮換地指定処分の取消を求める訴の利益は失われる。
あてはめ
建物移転通知を争う利益の本質は、建物所有者が自ら移転しない場合に、同条項に基づき行われる移転の「直接施行を阻止する」点にある。本件では、建物移転の直接施行が既に完了しており、もはや通知を取り消しても阻止すべき施行行為が存在しない。したがって、通知の取消しによって回復すべき利益は消滅しているといえる。また、仮に移転が違法であれば、国家賠償請求や仮換地使用収益権に基づく妨害排除請求という別の方途による救済が可能であり、取消訴訟を維持する必要性も認められない。
結論
建物移転の直接施行が完了した以上、建物移転通知の取消しを求める訴えは利益を欠き、却下を免れない。
実務上の射程
処分の執行完了により訴えの利益が消滅する典型例。答案では「処分の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後」の類型として整理する。あわせて、国家賠償請求における「処分先行性」を否定した点も重要であり、国賠訴訟との選択や訴えの変更の可否を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和49(オ)197 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: 棄却
一、農地買収計画についての訴願を棄却した裁決が行政事件訴訟特例法に基づく裁決取消の訴訟において買収計画の違法を理由として取り消されたときは、右買収計画は効力を失うと解すべきである。 二、二重訴訟を解消するために前訴が取り下げられても、前訴の請求がそのまま後訴においても維持されている場合は、前訴の提起により生じた時効中断…