一、証言当時九歳、八歳の児童であつても、その証言事項は単純であり、かつ、印象深い出来事であるなど判示のような事情のもとにおいては、その証言に信憑性がないものということはできない。 二、児童が判示のごとく弓矢を携えてする戦争ごつこまたはインデイアンごつこは、遊戯中の行為であるからといつても、その行為の態様、なかんずく失明という重大な結果を発生するおそれがあることなどからみて社会的に是認されるものとはいえず、違法性がないものとはいえない。 三、児童が弓矢を携行して外出するに際し、親権者である母が、これを現認し、児童に対し弓矢の使用を禁じその旨を約束せしめていたなど判示のような事情のもとにおいては、親権者である父母に児童の監督責任上の過失があるものとすることはできない。
一、証言当時九歳、八歳の児童の証言に信憑性がないとはいえないとされた事例 二、児童の遊戯による傷害に違法性があるとされた事例 三、親権者に児童の監督について過失がないとされた事例
民訴法271条,民法722条2項,民法709条
判旨
児童同士の遊戯中の加害行為であっても、その行為の態様や重大な結果発生の恐れからみて社会的に是認されない場合は違法性を有し、また、親権者が危険物の使用を禁じ約束させる等の措置を講じていれば監督責任上の過失は否定される。
問題の所在(論点)
1. 児童による遊戯中の加害行為に不法行為上の違法性が認められるか。 2. 危険物の携行を知りつつ使用禁止の約束をさせたにとどまる親権者に、監督責任(または被害者側の過失)が認められるか。
規範
不法行為の違法性については、行為の態様、結果の重大性、被害の性質等を総合考慮し、その行為が社会的に是認される限度を超えるか否かによって判断する。また、過失相殺や監督義務者の責任における注意義務の適否については、児童の年齢や知能、危険の予見可能性、および親権者が講じた具体的な防止策の内容を照らし、客観的に相当な監督を行っていたか否かによって決する。
重要事実
小学2年生の加害者F(8歳)とDらは、手製の弓矢(先端を削ったヨモギの茎等)を携えて、被害者(6歳)らと「インディアンごっこ」等の遊戯をしていた。Fが4メートル先から被害者に向けて放った矢が左眼に当たり、失明させた。被害者の母Gは、外出に際し弓矢の使用を禁じ、Fらにもその旨を約束させた上で外出を許していたが、弓矢そのものを取り上げるまではしなかった。Fらの証言の証拠能力と、Fの行為の違法性、および親権者の監督責任の有無が争点となった。
あてはめ
1. 弓矢を放つ行為は、たとえ遊戯中であっても、その態様および失明という重大な結果を発生させる恐れがあることから、社会的に是認される限度を超えており、違法性が認められる。 2. 証人となった児童らは事理弁別能力を備えており、証言内容も単純かつ印象深い出来事で不自然さもないため、信憑性を肯定できる。 3. 親権者Gは、児童らの年齢(6歳〜8歳)を考慮し、外出を差し止めようとしたり、弓矢の使用を厳格に禁じて約束させたりしており、当時の状況下で期待される監督責任を果たしたといえる。弓矢を取り上げる等の措置まで講じなかったとしても、監督責任上の過失があるとはいえない。
結論
加害者の行為には違法性が認められ、他方で被害者側の親権者に監督責任上の過失(または過失相殺の基礎となる過失)は認められない。
実務上の射程
スポーツや遊戯中の事故における違法性阻却の限界を示す事例である。特に対等な遊戯中であっても、具体的危険性が高い行為は「社会的に是認されない」として違法性が肯定されやすい。また、親権者の監督責任(民法714条)や被害者側の過失の判断において、児童の年齢に応じた具体的な指導・注意を行っていれば、物理的な強制措置(没収等)まで求められない場合があることを示す指針となる。
事件番号: 平成24(受)1948 / 裁判年月日: 平成27年4月9日 / 結論: 破棄自判
責任を弁識する能力のない未成年者の蹴ったサッカーボールが校庭から道路に転がり出て,これを避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷し,その後死亡した場合において,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,当該未成年者の親権者は,民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである。 (1) 上記未…