高等学校の生徒が,課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した場合において,その当時の文献には,運動場に居て雷鳴が聞こえるときには,遠くても直ちに屋内に避難すべきであるとの趣旨の記載が多く存在していること,上記試合の開始直前ころには,黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃されていたことなど判示の事実関係の下では,引率者兼監督の教諭は,落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。
高等学校の生徒が課外のクラブ活動としてのサッカーの試合中に落雷により負傷した事故について引率者兼監督の教諭に落雷事故発生の危険が迫っていることを予見すべき注意義務の違反があるとされた事例
民法415条,民法709条,民法715条
判旨
学校の課外活動における担当教諭は、当時の科学的知見に基づき落雷事故の危険を具体的に予見可能であった以上、結果回避措置を執るべき安全配慮義務を負う。また、大会パンフレット等に名称が記載された団体は、特段の事情がない限り主催者としての責任を免れない。
問題の所在(論点)
1. 課外活動の指導教諭において、落雷事故に対する具体的な予見可能性が認められるか。2. 一般的な指導者の認識が科学的知見に遅れている場合、それが注意義務を限定する理由となるか。3. 団体の名称を主催者として表示している場合、その団体は損害賠償責任を負う主体(主催者)といえるか。
規範
1. クラブ活動の担当教諭は、生徒がその指導監督に従って行動するものである以上、できる限り生徒の安全に関わる事故の危険性を具体的に予見し、未然に防止する措置を執るべき注意義務を負う。2. この予見可能性は、当時の文献等に示された科学的知見を基準に判断すべきであり、一般の指導者の認識が不十分であったとしても、その義務を免れさせる事情とはならない。3. 大会開催に際し、施設の貸与を受け、パンフレット等に主催者として記載された団体は、特段の事情のない限り主催者として責任を負う。
重要事実
高校サッカー部員Xは、引率者B教諭のもとで屋外競技大会に参加中、落雷により後遺障害を負った。事故直前、上空には暗雲が立ち込め、雷鳴や放電が目撃されていた。当時の文献(科学的知見)では「雷鳴が聞こえたら直ちに避難すべき」とされていたが、B教諭は「落雷の可能性はほとんどない」と独自に判断し試合を続行した。また、大会主催者の表示には財団法人Y協会の名称が含まれていたが、原審はYを名目的な関与にすぎないとして責任を否定していた。
あてはめ
1. 事故直前、暗雲・雷鳴・放電という視覚・聴覚的予兆があった以上、当時の科学的知見(本件各記載)に照らせば、落雷の具体的危険は予見可能であった。2. 「平均的な指導者の認識が薄い」という事情は、当時の科学的知見に反するものであって、生徒を保護すべき教諭の注意義務を免れさせる理由にはならない。3. Y協会は、会場の貸与を受け、名称もパンフレットに記載されている以上、単に加盟団体が実施を担当していたというだけでは「特段の事情」にあたらず、主催者として推認される。
結論
B教諭には落雷事故の具体的予見可能性があり、避難措置を怠った安全配慮義務違反(過失)が認められる。また、Y協会は本件大会の主催者として責任を負うべき立場にある。したがって、原審の責任否定判断を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
学校事故における「予見可能性」の判断基準を、指導者の主観や業界の慣習ではなく、当時の「客観的な科学的知見」に求めた点に射程がある。スポーツ指導現場での安全管理基準を厳格化した重要判例であり、債務不履行や不法行為の過失認定において、科学的文献の存在が決定的な考慮要素となることを示している。
事件番号: 昭和48(オ)671 / 裁判年月日: 昭和49年5月31日 / 結論: 破棄差戻
スキー・ロープ・トウ等を設置しスキー滑走場を開設している者又はこれを管理すべき立場にある者は、当該スキー滑走場においてスキー事故によつて受傷した者に対し、スキー滑走場の危険度、過去の事故数・その程度、来場するスキーヤーの能力、スキー事故の態様、状況等の具体的事情に対応する救護義務を負い、この義務を懈怠したときには民法七…