小学校二年生の児童甲が「鬼ごつこ」中に一年生の児童乙に背負われて逃げようとし、判示の事情のもとに過つて乙児童を転倒させ、よつて右上腕骨骨折の負傷を与えた場合、右傷害行為は、違法性がない。
「鬼ごつこ」中の傷害行為に違法性がないとされた事例
民法709条,民法712条,民法714条
判旨
児童が一般に容認される遊戯の過程で他人に傷害を加えた場合、特段の事情がない限り、その行為は客観的にみて条理上是認されるべきものであり、不法行為上の違法性を欠くと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
責任能力のない児童の行為が、一般に容認される遊戯の過程で行われた場合において、民法709条の客観的成立要件である「違法性」が認められるか。
規範
自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を具えない児童による行為であっても、不法行為(民法709条)が成立するためには客観的な違法性を要する。もっとも、「鬼ごっこ」などの一般に容認される遊戯中、その遊戯に関与する過程で行われた行為については、特段の事情が認められない限り、客観的にみて条理上是認されるべきものとして、違法性が阻却される。
重要事実
小学校2年生の児童Dは、校舎内で学友らと「鬼ごっこ」をして遊んでいた際、逃げるために近くにいた1年生の児童Aに対し「背負って」と頼んだ。Aがこれを承諾して背を向け、Dがその背に負われると同時に「走って」と促したところ、Aは走ろうとしてDを背負ったまま転倒し、傷害を負った。A側(上告人)は、Dおよびその保護者に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した。
あてはめ
本件において、AはDの依頼を承諾して背を向けており、Dを背負って走ろうとして転倒している。この事実に鑑みれば、A自身もその当時、Dら児童による「鬼ごっこ」という遊戯に関与し、加わっていたものと認められる。このような遊戯の過程におけるDの一連の行為は、一般に容認される遊戯中に行われたものであり、客観的にみて条理上是認しうる範囲内にある。したがって、本件において特段の事情は認められず、Dの行為は違法性を欠くというべきである。
結論
Dの行為は不法行為の客観的成立要件である違法性を欠くため、不法行為は成立しない。したがって、上告人らの請求を排斥した原審の判断は正当である。
実務上の射程
スポーツや遊戯中の事故における違法性阻却の法理を、責任無能力者である児童の事案に適用したものである。答案上は、責任能力(712条)の検討以前に、709条の客観的要件として「違法性」の有無を判断する枠組み(社会通念・条理による阻却)として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】加害行為により生じた外傷が、被害者の心因性反応によって神経性疾患として発症した場合、当該疾患と加害行為との間に相当因果関係を欠くと判断されることがある。特に、外傷自体が第三者の行為に基づくものであり、加害行為が単なる誘因に留まる場合には、賠償責任の範囲から除外される。 第1 事案の概要:被上告人(…