処分清算型の譲渡担保権者が担保の目的物(動産)を換価のため搬出する行為は、後順位の工場抵当権者に対して不法行為とはならない。
処分清算型の譲渡担保権者が担保の目的物を搬出する行為と不法行為の成否
民法369条
判旨
処分清算型譲渡担保権者が優先弁済権の実行として、目的物を換価処分するために搬出する行為は、権利実行のための必須の行為として適法であり、不法行為を構成しない。
問題の所在(論点)
処分清算型譲渡担保権者が、換価処分のために目的物を搬出する行為は、譲渡担保権の目的(担保)を超えた不法な所有権行使として不法行為を構成するか。
規範
処分清算型譲渡担保権者は、債務の弁済がない場合に目的物を換価処分して優先弁済を受ける権利を有する。この優先弁済権の実行は権利の本質的内容であるため、その目的でなされる客観的に必要な準備行為(搬出等)は、正当な権利行使の範囲内として違法性が阻却され、不法行為(民法709条)を構成しない。
重要事実
被上告人は、本件機械について処分清算型の譲渡担保権を有していた。債務の不履行に伴い、被上告人は優先弁済権を実行するため、本件機械を換価処分することを目的として、設置場所から搬出した。これに対し、上告人は当該搬出行為が不法行為にあたると主張して争った。
あてはめ
被上告人の権利は処分清算型の譲渡担保権であり、担保目的を超える所有権の主張は認められない。しかし、同権者が優先弁済を受けるには目的物を換価処分する以外に方法がない。したがって、換価の前提として目的物を搬出する行為は、譲渡担保権の実行に不可欠かつ「必須の行為」といえる。このように、権利実現に必要不可欠な態様で行われた搬出行為は、正当な権利行使の範囲内であり、不法行為の要件である違法性を欠くというべきである。
結論
被上告人の搬出行為は不法行為にはあたらない。上告人の請求は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
譲渡担保権実行の際の「自力救済」的側面をどこまで認めるかの基準となる。搬出が「換価処分のための必須の行為」と評価される限り、特段の事情がない限り適法とされる。なお、清算金が発生する場合には債務者の清算金返還請求権(代位行使含む)によって調整されるべきとの枠組みを示唆している。
事件番号: 昭和33(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者が担保として受け入れた株券を、債務者の承諾なく、かつ法定の手続きによらずに処分する行為は、特段の事由がない限り違法な不法処分となる。 第1 事案の概要:上告人(債権者)は、被上告人(債務者)から担保として受け入れた本件株券を、被上告人の承諾を得ることなく売却処分した。処分後、上告人側から売付…