判旨
執行吏保管の仮処分がなされている動産についても、債務者はその処分権を失わず、指図による占有移転による引渡しを行うことが可能である。
問題の所在(論点)
執行吏保管の仮処分がなされている動産について、仮処分債務者は当該物件の処分権を保持するか、また、指図による占有移転による引渡しをなし得るか。
規範
執行吏保管の仮処分(執行官が保管する形式の仮処分)がなされている物件であっても、仮処分債務者は当該物件の処分権を失うものではない。したがって、民法184条に規定される「指図による占有移転」の方法によって、当該物件の占有を移転し、対抗要件を備えることが可能である。
重要事実
被上告人(原告)は、訴外Dからジュラルミン屑を買い受け、引渡しを受けたと主張して、当該物件を売却処分した上告人(被告)に対し、所有権侵害に基づく損害賠償を請求した。当該物件の一部には、第三者が保管し執行吏が保管する形式の仮処分がなされていたが、Dは各保管場所に臨んで引渡しを行った。上告人は、仮処分中の物件については処分権がなく、引渡しも認められないと争った。
あてはめ
仮処分債務者は、物件が執行吏の保管下にあっても、法律上の処分権(売買等)まで奪われるものではない。本件では、物件が第三者(E株式会社等)の保管場所にあり、Dが間接占有を有していた。原審の「保管場所に臨んで現実の引渡しを受けた」との認定は、実質的に直接占有者である保管者に対する指図による占有移転を指すものと解される。したがって、仮処分の存在は占有移転を妨げるものではなく、適法に引渡しが完了しているといえる。
結論
仮処分債務者は処分権を失わず、指図による占有移転による引渡しも可能である。したがって、被上告人の所有権取得を認めた原審の判断に違法はない。
実務上の射程
民法184条の「引渡し」の有効性が、執行手続(仮処分)の存在によって制限されるかという文脈で活用できる。仮処分による効力は相対的なものであり、実体法上の権利移転や対抗要件の具備自体を否定するものではないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和30(オ)712 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
有体動産に対する占有権は、仮処分の執行として執行吏がこれを保管することによつて失われるものではないから、その動産の指図による占有移転は、仮処分債権者に対抗できないにとどまりその他のものに対する関係においては有効である。
事件番号: 昭和29(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】寄託を委任したからといって、当然に寄託関係の終了に伴う返還を受ける権限まで付与されたとは解されず、代理権限なき者への返還は債務不履行を構成する。また、倉庫業者として当然払うべき注意義務を尽くさない限り、受取人に代理権限があると信じたことについて正当な理由があるとはいえない。 第1 事案の概要:債権…