伐採を目的とする山林立木の売買契約においては、立木の引渡をもつて売主の義務の履行が完了するものではなく、売主は、立木の伐採、造材、搬出に必要な相当の期間、買主をして当該山林敷地を使用させる義務を負うものと解すべきである。
伐採を目的とする山林立木の売買契約における売主の義務
民法555条
判旨
伐採を目的とする立木の売買において、売主は目的物の引渡しのみならず、伐採・搬出に必要な相当期間中、買主に山林敷地を使用させる義務を負う。
問題の所在(論点)
伐採目的の立木売買において、売主は立木の引渡し後も、買主が伐採・搬出を完了するまで山林敷地を使用させる義務(民法555条等の売買契約上の義務)を負うか。
規範
立木の売買契約の目的がその伐採にある場合、売主の義務は単なる立木の引渡しのみで終了するものではない。特約がある場合はその期間、特約がない場合でも伐採・造材・搬出に必要な相当期間、買主に当該山林敷地を使用させる売買契約上の義務を負担すると解するのが相当である。
重要事実
上告人(買主)は、被上告人ら(売主)から山林内の立木を買い受け、代金を支払った上で伐採搬出を行っていた。しかし、第三者が山林の所有権を主張して仮処分を申請し、執行官が立木等の処分禁止を公示したため、上告人は残りの立木の伐採・搬出ができなくなった。上告人は、売主の義務が履行不能になったとして損害賠償を請求したが、原審は「売主の義務は立木の引渡しによって終了した」としてこれを棄却した。
あてはめ
本件売買が伐採を目的とするものである以上、通常、引渡しに続いて造材・搬出が行われることが予定されている。それゆえ、被上告人らが立木を案内して引き渡したとしても、それだけで義務が完了したとはいえない。仮処分の執行により伐採搬出が妨げられた時点において、当事者間に伐採期間の約定があったか、あるいは客観的に必要な相当期間が経過していたかを審理すべきであり、これらが未経過であれば、売主の敷地使用許容義務は依然として存続し、その不履行(履行不能)が成立しうる。
結論
売主の義務は引渡しのみで終了せず、伐採・搬出に必要な期間中は継続する。したがって、敷地使用を継続させられなくなった場合には債務不履行責任が生じうる。
実務上の射程
売主が負う「目的物を完全に享受させるために必要な一切の行為(付随的義務ないし継続的義務)」の具体的内容を示した判例である。答案上は、特定物売買における引渡し後の義務の存否や、履行不能の成否を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)42 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
立木法の適用を受けない立木の買受人においてこれに明認方法を施さないうちに右立木が伐採された場合、右買受人は当然伐木の所有者となるけれども、立木当時既に明認方法の欠缺を主張し得べき正当の利益を有した第三者に対する関係においては、伐木所有権をもつてこれに対抗し得ないものと解すべきである。