双方立会のうえ検収がすまないかぎり、買主は伐採木を搬出することができない旨の約定がある場合には、検収が終了しないかぎり、売主から買主に木材の引渡がされたものとはいえない。
立木の引渡があつたとはいえないとされた事例
民法182条
判旨
売買契約において検収前の搬出を禁止する特約がある場合、検収が完了しない限り、目的物の引渡があったとは認められない。
問題の所在(論点)
搬出禁止特約がある立木売買において、検収が終了していない段階で、売主から買主への目的物の「引渡」が完了したといえるか。
規範
売買契約における「引渡」の有無は、契約の解釈を通じて、目的物の占有が実質的に移転したか否かにより判断される。搬出禁止特約などの占有移転を制限する合意がある場合、その条件が成就しない限り、観念的な占有の移転(所有権の移転)とは別に、現実の引渡があったとは認められない。
重要事実
上告人(買主)と被上告人(売主)との間で立木売買契約が締結された。当該契約には「双方立会のうえ検収が済まない限り、買主は伐採木を搬出することができない」旨の特約(搬出禁止特約)が付されていたが、検収が完了しないままの状態であった。
あてはめ
本件契約では、検収が済まない限り伐採木の搬出が禁じられている。この特約は、検収を引渡の停止条件、あるいは占有移転の要件として定めたものと解される。事実関係として検収が終了していない以上、買主は目的物を自由に支配・管理できる状態になく、いまだ売主の占有下にある。したがって、所有権の移転時期がいつであるかにかかわらず、物理的・実質的な占有の移転を意味する「引渡」がなされたとは認められない。
結論
検収が終了しない限り、売主から買主に売買目的物の引渡がされたとはいえない。
実務上の射程
危険負担の移転時期や対抗要件としての引渡(動産)が問題となる場面で、契約上の検収条項が引渡の成否に直結することを示す射程を持つ。所有権移転時期と引渡時期が分離し得ることを前提とした答案構成に有用である。
事件番号: 昭和25(オ)94 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和31(オ)608 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、行政庁の承認を効力発生の条件とする旨を合意することは契約自由の原則に基づき有効であり、当該承認が得られなかった場合には、不法条件等の特段の事情がない限り、契約の効力は発生しない。 第1 事案の概要:鉱業権者であった上告人とDとの間で、鉱山設備資材の売買契約が締結された。当時、政府…
事件番号: 昭和27(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物の引渡義務の履行不能に基づく代替賠償(損害賠償)を請求する場合、その賠償額は目的物自体の価格により算定すべきであり、請負代金や税金相当額を当然に控除すべきではない。 第1 事案の概要:被上告人(注文者)は、上告人(請負人)に対し、製織委託契約(請負契約)に基づき製織品の引渡を請求した。しかし、目…