認定した売買契約成立の日時についての判示の誤謬が記録上明白なものであるときは、右誤謬が当事者の申立の誤りおよび提出された証拠内容の誤りに基づくものであつても、民訴法第一九四条第一項を準用して誤謬の更正をすることが許される。
民訴法第一九四条第一項を準用して判示の誤謬の更正が許されると認められた事例
民訴法194条1項
判旨
売買契約の成立日時に相当の隔たりがあっても、当事者、目的物、代金支払方法において同一であれば契約の同一性は失われず、判決主文に記載された日時の誤謬が記録上明白な場合は、更正規定(民訴法257条1項)を準用して訂正できる。
問題の所在(論点)
契約成立日時の認定が第一審と控訴審で異なる場合に、訴訟物の同一性が維持されるか(請求原因の変更にあたるか)。また、判決主文の日付の誤りを更正規定の準用により訂正できるか。
規範
契約成立の日時に相当の隔たりがある場合であっても、当事者、目的物、代金支払方法において同一性が認められるならば、その日時は契約を特定するための一要素にすぎず、請求原因の変更を伴うものではない。また、判決書に記載された事実の誤謬が記録上明白なときは、裁判所の意思と表現の齟齬でなくとも、民事訴訟法上の更正規定を準用してこれを訂正することが許される。
重要事実
第一審は証拠に基づき売買契約成立日を昭和28年1月19日と認定し、主文で同日付の所有権移転登記を命じた。しかし控訴審において、被上告人が記憶違いを理由に「昭和25年12月末ころ」と主張を訂正した。原審(控訴審)は証拠に基づき修正後の日時を事実認定したが、第一審の判断した契約と当事者、目的物、代金支払方法が同一であると判断し、控訴を棄却した上で、第一審判決主文の登記原因日付を「昭和25年12月末ころ」へと訂正した。これに対し上告人が弁論主義違反等を主張した事案である。
事件番号: 昭和39(オ)672 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
買受の意思表示をなした日を示して主張された買戻権行使による登記手続請求に対し、買戻の効力が生じた日を示してなした登記手続請求認容の判決には、民訴法第一八六条に違反する違法はない。
あてはめ
本件の両契約は、認定された日時に約2年半の隔たりがあるものの、当事者、目的物、代金支払方法が完全に共通している。この点、第一審での日時指定は被上告人側の記憶違いに基づく証拠内容の誤りに起因するものであり、契約自体の同一性は失われていない。したがって、請求原因の変更はないため、原審が第一審の結論を維持したことは弁論主義に反しない。さらに、第一審判決の日付誤認は記録上明白な誤謬といえるため、民訴法194条1項(現257条1項)を準用し、主文の更正として日付を訂正した原審の処置は正当である。
結論
契約としての同一性を有する以上、日時の相違は請求原因の変更を構成せず、記録上明白な誤謬として判決主文の訂正が可能である。原判決に違法はなく、上告棄却。
実務上の射程
登記手続を命じる判決等において、登記原因日付の認定に誤りがあった場合の救済策を示す。実務上は、主要事実の認定が動いたとしても、攻撃防御の対象となる社会的事実の同一性が維持されていれば弁論主義違反とならないとする「訴訟物の特定」や「更正」の範囲を判断する際の指標となる。
事件番号: 昭和34(オ)661 / 裁判年月日: 昭和35年4月12日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】裁判所の受付印が真の受付日時と一致しない事情がある場合、受付印の日付のみにより控訴期間の遵守を判断することは、審理不尽の違法にあたる。 第1 事案の概要:本件控訴状には、第一審裁判所の昭和34年4月9日付の受付印が押されていた。しかし、この受付印は受付当日ではなく数日後に脱落を発見して押印されたも…
事件番号: 昭和36(オ)708 / 裁判年月日: 昭和39年2月20日 / 結論: 棄却
一 訴状において停止条件附代物弁済契約の条件成就による所有権取得の効果の主張のみが記載されている場合においても、原告がその後の弁論において、代物弁済の予約の主張を追加してその予約の完結権行使が訴状の送達をもつてされた旨主張したときには、その訴状送達の時に右予約完結権の行使があつたものと認めることができる。 二 貸金担保…
事件番号: 昭和27(オ)163 / 裁判年月日: 昭和29年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審で追加された請求が、元の請求と請求原因を全く異にし、かつ元の請求の当否を判断する先決関係にもない場合、それは訴の変更に該当する。その変更が訴訟手続を遅延させると認められるときは、裁判所はこれを許容しないことができる。 第1 事案の概要:上告人は第一審において、対象土地の所有権確認および移転登…
事件番号: 昭和31(オ)124 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
売買を原因として所有権移転登記手続の履行を命じる判決をなす場合、売買の日附は、必ずしも主文に表示する必要なく、理由中に明示されておれば足りる。