買受の意思表示をなした日を示して主張された買戻権行使による登記手続請求に対し、買戻の効力が生じた日を示してなした登記手続請求認容の判決には、民訴法第一八六条に違反する違法はない。
買受の意思表示をなした日を示して主張された買戻権行使による登記手続請求に対し、買戻の効力が生じた日を示してなした登記手続請求認容の判決に民訴法第一八六条の違反があるか
民訴法186条
判旨
裁判所が原告の主張する請求権の成立を認めつつ、その発生時期を原告の主張とは異なる日に認定したとしても、それが請求を基礎づける権利自体の同一性を損なわない限り、処分権主義には反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が原告の主張する権利発生時期とは異なる日を基準に権利の成立を認定した場合、処分権主義(民訴法246条)および弁論主義に違反するか。
規範
処分権主義(民訴法246条)の観点から、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることはできない。しかし、判決の主文において請求の特定のために示される事実(原因事実や発生日等)が、当事者の主張と多少整合しない場合であっても、請求の同一性を維持し、かつ相手方の防御に不測の不利益を与えない範囲内であれば、裁判所は当事者の主張に拘束されず、証拠に基づき事実を認定することが許される。
重要事実
原告(控訴人)らは、被告(被控訴人)に対し、昭和34年8月20日に買戻代金50万円を口頭提供して買戻しの意思表示を行ったと主張し、不動産所有権移転登記を請求した。これに対し、原審(控訴審)は、買戻契約の存在と意思表示があった事実は認定したが、買戻しの効力が発生した時期については、原告の主張(同年8月21日)とは異なり、同年10月4日であると判断して、その旨を判決に表示した。上告人は、この認定が申立の範囲を超えた判決(旧民訴法186条違反)であり、かつ弁論主義に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和42(オ)672 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 棄却
認定した売買契約成立の日時についての判示の誤謬が記録上明白なものであるときは、右誤謬が当事者の申立の誤りおよび提出された証拠内容の誤りに基づくものであつても、民訴法第一九四条第一項を準用して誤謬の更正をすることが許される。
あてはめ
原判決は、原告らが主張する買戻契約に基づく登記請求権という権利自体を認定しており、その権利発生の具体的な日付の認定において原告の主張と齟齬が生じているにすぎない。買戻しの効力発生時期がいつであるかは、登記請求権の成否という結論そのものを左右するものではない。また、原告らが昭和34年8月20日に代金を口頭提供したという主要事実は主張されており、これに基づき裁判所が事実認定を行っている以上、弁論主義違反もない。したがって、裁判所が証拠に基づいて認定した効力発生日を判決に用いることは、当事者が申し立てた請求の範囲内にあるといえる。
結論
本件における権利発生時期の認定の差異は、請求の同一性を逸脱するものではなく、処分権主義および弁論主義に違反しない。したがって、原判決に違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
処分権主義の限界に関する論点(一部認容判決の可否や訴訟物の特定)において、裁判所の認定が主張と完全に一致しなくとも、請求の同一性の範囲内であれば許容されることを示す事例として活用できる。特に、登記請求権における原因日付の認定が主張とズレた場合の適法性を肯定する論拠となる。
事件番号: 昭和39(オ)900 / 裁判年月日: 昭和40年2月11日 / 結論: 棄却
「被上告人が甲を代理人とし一二月初め代物弁済予約完結の意思表示をした」との主張に対し、裁判所が、被上告本人が一二月二七日頃代物弁済予約完結の意思表示をしたと認定しても、弁論主義に反しない。
事件番号: 昭和24(オ)120 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
当事者が贈与による所有権の取得を主張する場合、裁判所が右主張に基いて贈与の事実を認定している以上、贈与者がその物の所有権を取得するに至つた経過について、当事者の主張と異なる認定をしていても、当事者の申し立てない事項について裁判したものとはいえない。
事件番号: 昭和34(オ)1210 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の主張した日時や形式とは異なる態様で契約の成立を認定しても、それが当事者の主張の範囲内における事実の評価にすぎない場合には、弁論主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(建築主)が、上告人(施工者)に対し、建物建築請負契約に基づき建物の引渡し等を求めた事案。被上告人は「昭和24年…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。