売買を原因として所有権移転登記手続の履行を命じる判決をなす場合、売買の日附は、必ずしも主文に表示する必要なく、理由中に明示されておれば足りる。
売買を原因として所有権移転登記手続の履行を命じる場合と売買の日附を主文に表示することの要否
民訴法191条1項,不動産登記法35条1項,不動産登記法35条2項,不動産登記法36条5号
判旨
売買を原因とする所有権移転登記手続を命ずる判決において、売買の日付は判決理由中に明示されていれば足り、主文への表示がなくても執行力を欠くことはない。
問題の所在(論点)
所有権移転登記手続を命ずる判決の主文に、登記原因となる売買の日付を表示する必要があるか。表示がない場合に、執行力(登記適格性)が否定されるか。
規範
売買を原因とする所有権移転登記手続を命ずる判決においては、その原因たる売買の日付を必ずしも主文に表示することを要しない。判決理由中にこれが明示されていれば、給付条項として特定されており、登記手続の執行力(不動産登記法上の登記原因の証明)を認めるに足りる。
重要事実
被上告人が上告人に対し、売買を原因とする所有権移転登記手続を求めた事案。第一審判決は、将来の特定の事由が生じた際に移転登記手続をすべき旨の、将来の給付を命ずる内容であった。上告人は、主文に売買の日付が表示されていないため、登記が不能であり執行力を欠く違法があると主張して上告した。
事件番号: 昭和34(オ)1150 / 裁判年月日: 昭和37年6月7日 / 結論: 棄却
判決における事実および争点の摘示は、弁論を経た係争事実で判決をするのに必要なものを明らかにすれば足りる。
あてはめ
所有権移転登記の登記原因(売買等)及びその日付は、登記事務上必要な事項であるが、判決書全体として内容が確定できれば足りる。本件では、判決理由中において原因となる売買が特定されている。また、本件の権利移転は将来の未定の日時にかかるものであるから、主文に確定的な日付を表示することは性質上不能でさえある。したがって、主文に日付の記載がないことのみを理由として登記不能に陥るとは解されない。
結論
主文に売買の日付の記載がなくとも、理由中に明示されていれば判決に違法はなく、執行力を有する。
実務上の射程
登記手続を命ずる判決の特定(民事執行法174条1項)に関する重要判例である。実務上、既判力や執行力の範囲を画定するために請求の特定は必要だが、主文のみならず理由中の説示を総合して特定されていれば足りるという判断枠組みを示すものである。答案上は、判決主文の不備を理由に無効を主張する相手方への反論として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)694 / 裁判年月日: 昭和41年1月21日 / 結論: 破棄差戻
履行期の約定がある場合であつても、当事者が債務の履行期前には履行に着手しない旨合意している等格別の事情のないかぎり、右履行期前に民法第五五七条第一項にいう履行に着手することができないものではない。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。