宗教団体法による宗教団体のした同法第一〇条第一項所定の地方長官の認可を得ない不動産長期賃貸借契約は、その後宗教団体法が廃止され、同法に代わつて施行された宗教法人令およびさらにこれに代わる宗教法人法によれば、不動産長期賃貸借契約について地方長官の認可を要しないこととなつても、そのことにより当然に有効となるものではない。
宗教団体法所定の地方長官の認可を得ない不動産長期賃貸借契約の同法廃止後における効力
宗教団体法(昭和14年法律第77号)10条,宗教法人令(昭和20年勅令第719号)11条,宗教法人令(昭和20年勅令第719号)附則,宗教法人法23条,宗教法人法24条,宗教法人法附則
判旨
宗教団体法に基づき知事の認可を要する不動産賃貸借契約が、認可なく締結された場合、その後の法改正により認可制が廃止されたとしても、当該契約が当然に有効となるものではない。また、訴訟の終盤で契約無効を主張することが直ちに信義則に反するとは限らない。
問題の所在(論点)
1. 認可を欠くため無効であった契約が、後の法改正による認可制の廃止によって有効(瑕疵の治癒)となるか。2. 訴訟の最終段階で契約無効を主張することが、信義則(民法1条2項)に反するか。
規範
行政庁の認可を効力要件とする契約において、認可を得ずに締結された契約は原則として無効であり、その後に根拠法が廃止され認可制度がなくなったとしても、特段の事情がない限り、遡及的に有効性を取得(瑕疵が治癒)することはない。また、信義則違反の成否は、訴訟の経過および事実関係に照らして判断される。
重要事実
上告人は、宗教団体法の下で地方長官(知事)の認可を得ずに不動産の長期賃貸借契約を締結した。その後、宗教団体法は廃止され、宗教法人令および宗教法人法が施行されたが、新法下では同様の契約に認可を要しないこととされた。被上告人は第一審の口頭弁論終結間際になって、認可を欠くことを理由に契約の無効を主張し、土地明渡しを請求した。
事件番号: 昭和39(オ)754 / 裁判年月日: 昭和41年5月17日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。
あてはめ
1. 契約締結時に宗教団体法10条1項に基づく認可を得ていない以上、当該契約は効力を生じない。その後の法改正により不動産の長期賃貸借に認可が不要となったとしても、過去に遡って契約を有効にする法的根拠はなく、当然に有効となるものではない。2. 本件の訴訟経過によれば、第一審の終結間際に無効主張がなされた事実は認められるものの、確定した事実関係に照らせば、当該主張が信義に反して権利関係を不安定にするものとはいえず、信義則違反には当たらない。
結論
契約は無効であり、法改正による瑕疵の治癒も認められない。また、被上告人の無効主張は信義則に反しないため、土地明渡請求は認められる。
実務上の射程
強行法規や行政上の規制に基づく「認可」を欠く法律行為の効力に関する射程を持つ。法改正による規制緩和があっても、既になされた無効な行為が当然に有効化することはない(法的安定性の重視)という原則を示す。答案上は、信義則(矛盾挙動の禁止)の抗弁に対する再反論の場面や、認可を要する契約の効力が争点となる場面で活用できる。
事件番号: 昭和43(オ)717 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
甲所有の丁土地と乙所有の戊土地とを交換する契約が甲乙間になされ、乙が丁土地をさらに丙に譲渡して未だその登記を経ない間に、乙に対する国税の滞納処分として戊土地が差押公売されたため、甲が履行不能を理由に右交換契約を解除した場合において、甲が、交換契約に基づき戊土地を自ら使用しており、他方右契約当時においても丁土地が乙から丙…
事件番号: 昭和44(オ)119 / 裁判年月日: 昭和44年5月30日 / 結論: 棄却
土地賃貸人が、二ケ月分合計三〇〇〇円の賃料の延滞を理由として、無催告解除の特約に基づき、賃借人に対し、右二ヶ月目の賃料の履行期を徒過した翌日に、賃貸借契約解除の意思表示を発信した場合において、賃借人が賃借以来これまで一一年余の間賃料の支払を怠つたことがなく、右賃料延滞は、賃貸人の娘婿が賃借土地に隣接する賃貸人所有の土地…