地方公共団体の長が議会の議決を経ないで当該地方公共団体を代表して他人の債務を保証する行為は無効である。
地方公共団体の長が議会の議決を経ないで当該地方公共団体を代表してした債務保証行為の効力
地方自治法(昭和38年法律第99号による改正前のもの)96条1項8号
判旨
地方公共団体の長が議会の議決を要する事項について議決を経ずに締結した契約は、代表権限を欠く行為として原則として無効である。
問題の所在(論点)
地方公共団体の長が、地方自治法に基づき議会の議決を要する事項について、議決を経ずに代表者として行った契約の効力はどうなるか。
規範
地方公共団体の長は、当該団体を代表し事務を管理執行する権限を有するが、法律(地方自治法96条1項各号等)により議会の議決を経るべきものと定められた事項については、その議決を経ない限り、当該行為についての代表権限を有しない。したがって、議決を欠く行為は、無権限の行為として無効と解すべきである。
重要事実
土地売買に関連し、A1町の長が、訴外会社の代金債務について被上告人に対し保証契約を締結した。しかし、当時の地方自治法96条1項8号によれば、当該保証契約の締結は町議会の議決を要する事項であった。原審は、町議会の議決の有無を確定しないまま、町長による保証契約を有効と認めて町(A1町)に保証債務の履行を命じた。
事件番号: 昭和37(オ)202 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
町条例に、競争入札以外の方法による町有不動産の売却が予定価格二〇万円未満のものまたは予定価格二〇万円以上五〇万円未満で急施を要するものについてなされるときには、町議会の議決を要せず、町長において町を代表して私法上の売買契約を締結できる権限がある旨規定されている場合は、同町長の右制限をこえる町有不動産売却行為について、右…
あてはめ
本件における保証契約は、法律上議会の議決が必要な事項に該当する。それにもかかわらず、議決を経た事実が認定されていない以上、町長は本件保証契約を締結する適法な代表権限を欠いていたといえる。議決の存在について釈明を尽くさず、直ちに保証の有効性を認めた原審の判断は、地方公共団体の長の代表権限に関する解釈を誤ったものである。
結論
議決を欠く保証契約は無権限の行為として無効であり、町が当然に保証責任を負うわけではない。議決の存否や、無効である場合の表見代理の成否等について審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
地方自治法上の議決事項に関する権限の性質が「法的制限」であることを明示した判例であり、答案上は長が行った契約の有効性を論じる際の出発点となる。ただし、本判決は私法上の無効を導くが、相手方保護の観点から民法110条等の表見代理の類推適用による救済の余地があることにも注意を要する。
事件番号: 昭和45(オ)112 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 破棄差戻
一、民法一〇九条、商法二六二条は、会社を訴訟上代表する権限を有する者を定めるにあたつては、適用されない。 二、控訴裁判所が被告会社代表者の代表権限の欠缺を看過してなされた第一審判決を取り消す場合には、原告に対し訴状の補正を命じさせるため、事件を第一審裁判所に差し戻すべきであり、ただちに訴を不適法として却下すべきではない…
事件番号: 昭和36(オ)1378 / 裁判年月日: 昭和40年9月22日 / 結論: 棄却
一 株式会社の代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、相手方において右決議を経ていないことを知りまたは知ることができたときでないかぎり、有効である。 二 中小企業等協同組合は、法令がとくに理事会の決議事項であると定めたものを除いて、理事会に属…