融通手形で手形金支払義務がない旨の主張に対し見せ手形であつて支払義務がない旨を判示しても、弁論主義に反しない。
融通手形の主張に対し「見せ手形」と判断することと弁論主義違反の有無
民訴法186条
判旨
手形当事者間において、振出人が支払義務を負わない合意のもとで振り出された、いわゆる「見せ手形」については、受取人は振出人に対し手形金の支払を請求することができない。
問題の所在(論点)
手形の直接当事者間において、支払義務を負わない合意のもとで振り出された「見せ手形」の効力が、振出人と受取人の間で認められるか。
規範
手形行為が真実の権利移転や債務負担を目的とせず、単に形式を整えるために行われた場合(虚偽表示等)、手形の直接当事者間においては、その実質的な合意(通謀虚偽表示による無効、または支払義務を負わない旨の合意)が優先される。
重要事実
振出人(被上告人)は、受取人(上告人)との間で約束手形を振り出した。しかし、この手形は本件請負工事の代金支払(実額101万円)とは別に、形式的にのみ作成された「見せ手形」であった。振出人は、受取人との間で手形金の支払義務を負わない実態にあった。
あてはめ
本件手形は、原審の認定によれば振出人が受取人に対して支払義務を負わない「見せ手形」にすぎない。また、関連する書証も「見せ証文」であり、実際の代金債務と連動するものではなかった。直接の当事者間においては、手形作成の背後にある「支払義務を負わせない」という合意が優先されるため、手形上の権利行使は認められない。
結論
振出人は受取人に対し、手形金の支払義務を負わない。
実務上の射程
手形の直接当事者間における人的抗弁(通謀虚偽表示・権利濫用等)の主張として機能する。ただし、善意の第三者に手形が渡った場合には、手形法上の公信力によりこの抗弁は切断される点に注意が必要である。
事件番号: 昭和41(オ)586 / 裁判年月日: 昭和41年12月1日 / 結論: 棄却
会社の資力を仮装するため単に見せ手形として使用する約束のもとに振出人欄に記名押印し振出日および受取人欄を空欄として交付された約束手形につき、相手方が約旨に反して右空欄を補充した場合であつても、さらに裏書譲渡を受けた所持人が悪意重過失なくして右約束手形を取得したものである以上、振出人は所持人に対して手形金支払義務を負うも…