候補者立会演説会において一候補者の演説中聴衆から野次があつたが、そのために演説が聞きとれないほどのものではなく、司会者たる市選挙管理委員長も二、三回にわたりこれを制止した事実があるときは、右委員長が野次を行なつた者を退去させる措置までとらなかつたとしても、立会演説会の秩序維持を怠つたものということはできない。
候補者立会演説会における野次と公職選挙法第一五九条の適用
公職選挙法159条
判旨
選挙管理委員会が配布したステッカーの文言が特定の候補者に有利な印象を与えるものではなく、また立会演説会での野次を制止した等の事情があれば、選挙の規定に違反する事由があるとは認められない。
問題の所在(論点)
1. 選挙管理委員会が配布したステッカーの文言が、特定の候補者を有利にする規定違反に当たるか。2. 立会演説会での野次に対し退去措置を講じなかったことが、選挙管理執行上の義務違反(秩序維持の懈怠)に当たるか。
規範
公職選挙法上の選挙無効事由(規定違反)の成否は、当該行為が特定の候補者を有利にする客観的な蓋然性があるか、および選挙の公正を害して結果に異動を及ぼすおそれがあるかにより判断される。また、管理執行者の義務違反については、当時の状況に照らし、秩序維持のための適切な措置を講じていたかという観点から判断すべきである。
重要事実
市長選挙において、市選挙管理委員会が配布したステッカーの文言がD候補を有利に連想させるとして、対立するE候補側が抗議した。市選管は紛議回避のためステッカーの回収に努めた。また、E候補の立会演説会中に聴衆から野次が飛んだが、演説が聞き取れないほどではなく、司会を務める選管委員長は2、3回これを制止したが、野次を飛ばす者を退去させる措置までは講じなかった。上告人は、これらの事由が選挙規定違反に当たるとして選挙無効を主張した。
あてはめ
1. ステッカーの文言自体や事実関係を検討すると、一般選挙民がD候補に有利な印象を受けたとは認められず、選挙結果に異動を及ぼすおそれはない。選管が回収に努めたのは投票前の紛議回避を目的としたものと推認され、規定違反を裏付けるものではない。2. 野次は演説を妨害するほどではなく、委員長が複数回制止していることから、野次を飛ばす者を直ちに退去させなかったとしても、立会演説会の秩序維持を怠ったとはいえない。
結論
本件ステッカーの配布および演説会での対応は、いずれも選挙の規定に違反するものではなく、選挙無効の主張は認められない。
実務上の射程
選挙管理執行の瑕疵と無効事由の関係を扱う事案での参照。選管の行為が「特定の候補者に有利な印象を与えるか」の客観的判断や、演説会における秩序維持措置の裁量・限度を示す際の材料となる。
事件番号: 昭和32(オ)587 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
市長選挙に際し、市選挙管理委員会のポスター検印に違法があつてもその検印が特定の候補者の当選の便宜を図る目的で故意に為されたものではなく、右違法検印によつて掲示されたポスターの数は最大限一四〇枚であつて、掲示された時間は一枚を除き一時間三〇分ないし二時間三〇分くらいであり、候補者氏名は市民によく知られており、選挙の結果候…
事件番号: 昭和32(オ)461 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】部落(地域組織)による候補者の推薦や選挙運動は直ちに違法ではなく、個別の運動に違法があっても、それが公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反として選挙無効の原因になるものではない。 第1 事案の概要:市議会議員選挙において、各地区(部落)の有志や各種団体幹部が協議し、地域の利益擁護を目的に地域別…