妻子とともに甲町に居住するが、夫婦で乙市(甲町に隣接)において飲食店を経営し、かつ自身は同市における共産党の党活動に従事している者が、昭和三八年四月初め単身乙市の知人方に同居し、同所に住民登録をし、同所に寝起し、従前どおり飲食店の仕入や党活動を続け、同年九月さらに乙市内で転居し甲町から妻子を呼び寄せて同居するに至つているときは、その者の同年五月一〇日から八月一〇日の間における住所は、すでに乙市にあつたものと認めることができる。
家族と離れ単身知人方に同居した者の住所をその同居先と認めた事例
公職選挙法9条
判旨
民法上の住所(22条)の認定は、証拠に基づき客観的に生活の本拠を判断すべき事実認定の問題であり、上告審においては原審の専権に属する証拠の取捨選択および事実認定を不当として争うことはできない。
問題の所在(論点)
特定の期間における被上告人の住所がどこにあったかという事実認定、およびそれに基づく原審の判断が、上告審において覆されるべき違法なものか。すなわち、住所の認定が原審の専権に属するか否かが問題となった。
規範
民法上の「住所」とは、各人の生活の本拠を指し(民法22条)、その判断は客観的な居住の実態、期間、生活の態様等を総合して決定される事実認定の問題である。事実認定は、経験則に反する等特段の事情がない限り、原審の専権に属する。
重要事実
上告人は、被上告人の特定の期間(昭和38年5月10日から同年8月10日まで)における住所の所在について争い、原審(控訴審)が当該住所を滋賀県八日市市(現・東近江市)内の特定の地番にあると認定したことに対し、上告理由を申し立てた。
あてはめ
最高裁判所は、原審が挙げた証拠に照らせば、被上告人の住所を八日市市a町b番地であると認めた判断は肯認できると判断した。上告人の主張は、単に原審の証拠の取捨選択や事実認定を非難するものにすぎず、原判決に証拠法則違反等の違法は認められないとした。
結論
本件上告を棄却する。原審による住所の事実認定に違法はなく、住所の確定は原審の専権に属する事項である。
実務上の射程
住所の認定が争点となる事案(公示送達の要件や管轄の有無等)において、客観的な生活実態に基づく事実認定の重要性を示す。実務上、住所は客観的な生活の本拠として認定されるべき事実問題であり、証拠によって基礎付けられた原審の認定は尊重されるという原則を確認するものである。
事件番号: 昭和23(オ)97 / 裁判年月日: 昭和24年4月28日 / 結論: 破棄差戻
都市に居住していた者が、空襲の激化に伴い徒歩及び汽車約一時間の地域に疎開転出し、終戦後再びその都市を職業生活の中心と定め、寝食の器具を移し、その都市に起居するに至つた場合は同市に転入手続をせず、配給物資を受けず、疎開先の選挙人名簿に登載され、家族は疎開先に居住していても、特別の事情がない限り、その時に住所を同市に移した…
事件番号: 昭和27(オ)1065 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙権の要件たる「住所」の移転について、生活の実態に基づいて判断すべきであり、特定の選挙期日までに旧住所地から新住所地へ拠点を移した事実が認められる場合には、住所の移転が認められる。 第1 事案の概要:岐阜県議会議員選挙において、原審参加人Cの選挙権の有無が争点となった。Cは昭和26年4月30日の…
事件番号: 昭和36(オ)10 / 裁判年月日: 昭和36年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の「住所」の認定において、客観的な事実関係により生活の本拠が当該地にないことが明らかに判定できる場合には、本人の主観的意欲を考慮する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、a村に住所を有することを前提に選挙権や被選挙権(公職選挙法9条、10条)を主張したが、原審において客観的な生活実…
事件番号: 昭和40(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和40年8月24日 / 結論: 棄却
候補者の氏名の記載のほか、その上部「○」印を附記した投票を他事記載として無効と解することは、公職選挙法第六七条後段に違反せず、また憲法第一五条の解釈を誤るものではない。