公職選挙法第九条第二項の住所とは、その人の生活にもつとも関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものと解すべく、私生活面の住所、事業活動面の住所、政治活動面の住所等を分離して判断すべきものではない。
公職選挙法第九条第二項の住所の意義
公職選挙法9条2項,民法21条
判旨
公職選挙法上の選挙権の要件としての住所は、その人の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心をもって判断すべきであり、私生活・事業活動・政治活動等の側面を分離して判断すべきではない。
問題の所在(論点)
公職選挙法9条2項にいう「住所」の意義、およびその認定において私生活面・事業活動面・政治活動面等を分離して判断することが許されるか。
規範
公職選挙法および地方自治法が住所を選挙権の要件とする趣旨は、一定期間、一の地方公共団体の区域内に居住する者に対し、当該団体の政治に参与する権利を与える点にある。したがって、同法上の「住所」とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すと解すべきであり、活動の態様(私生活、事業、政治等)ごとに分離して判断することは認められない。
重要事実
訴外Dの選挙権の有無に関し、その「住所」がa町にあるのか、あるいは長浜市に移転したのかが争点となった事案である。上告人は、住所の認定にあたり、原判決が生活全般の本拠という観点から判断したことを不当とし、私生活や事業活動、政治活動等の側面から個別に判断すべきであると主張して上告した。
事件番号: 昭和41(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和41年12月22日 / 結論: 棄却
妻子とともに甲町に居住するが、夫婦で乙市(甲町に隣接)において飲食店を経営し、かつ自身は同市における共産党の党活動に従事している者が、昭和三八年四月初め単身乙市の知人方に同居し、同所に住民登録をし、同所に寝起し、従前どおり飲食店の仕入や党活動を続け、同年九月さらに乙市内で転居し甲町から妻子を呼び寄せて同居するに至つてい…
あてはめ
最高裁は、住所の意義を「全生活の中心」とする従来の判例(最大判昭和29年10月20日等)を維持した。本件において、Dの住所がa町から長浜市に移転したか否かの判断にあたり、特定の活動領域のみを抽出するのではなく、諸般の事実を総合して「生活全般の本拠」を認定した原審の判断枠組みは、公職選挙法の趣旨に照らして正当であると評価した。
結論
公職選挙法上の住所は全生活の本拠によって定まるため、これを分離して判断すべきとする上告人の主張は採用できず、上告は棄却される。
実務上の射程
地方選挙における居住要件(住所要件)の判断において、客観的な生活実態を総合的に考慮する「生活の本拠」概念が確立されていることを示す。答案上では、形式的な住民票の有無ではなく、滞在時間、家族の居住地、仕事の態様などの諸客観的事実に基づき、全生活の中心がどこにあるかを認定する際の規範として活用する。
事件番号: 昭和32(オ)552 / 裁判年月日: 昭和32年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の「住所」とは、単に本人の主観的な居住意思だけではなく、客観的に生活の本拠たる実体を伴う場所を指す。したがって、住所とする意思があっても、客観的な生活の実体が認められない場合は、同法上の住所とは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年12月下旬以来、横須賀市内の特定の場所…
事件番号: 昭和27(オ)1065 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙権の要件たる「住所」の移転について、生活の実態に基づいて判断すべきであり、特定の選挙期日までに旧住所地から新住所地へ拠点を移した事実が認められる場合には、住所の移転が認められる。 第1 事案の概要:岐阜県議会議員選挙において、原審参加人Cの選挙権の有無が争点となった。Cは昭和26年4月30日の…