開票会で無効とされた投票についての当事者の有効の主張を斥け無効としながら、同種の記載内容の投票であつて開票会で有効とされた投票が検証調書に記載されているにもかかわらず、これらの投票に関する当事者の主張を明確ならしめず、有効とされたままで候補者の得票数を計算し当選の効力を判断したのは、当事者の主張について釈明を尽さなかつた違法があるものといわなければならない。
投票の効力に関する当事者の主張について釈明を尽さなかつた違法があるとされた事例。
公職選挙法208条,公職選挙法219条,民訴法127条
判旨
当選無効訴訟において、一連の投票が争訟の範囲内に包含されると解される場合、裁判所は、釈明権を行使して当事者の主張を明確にし、その効力を判断すべき義務を負う。
問題の所在(論点)
当選無効訴訟において、明確な口頭弁論上の主張がない投票についても、釈明権を行使してその効力を審理・判断すべき責務が裁判所にあるか。
規範
当選無効訴訟において、裁判所は当事者の主張がない投票についてまで効力を判断する義務を負わない。しかし、特定の投票群が他の争点化された投票と全く同種の内容を有し、検証の際にも顕出されるなど、実質的に争訟の目的の範囲内に包含されると解される場合には、裁判所は釈明権を行使して当事者の主張を明確にさせ、その効力を判断しなければならない。
重要事実
上告人の当選を無効とする訴訟において、原審は「ミヤギ」等の記載がある投票10票について無効と判断したが、これと全く同種内容の記載がある別の投票18票については、上告人が検証時にこれを選び出していたにもかかわらず、その効力について主張を明確にさせることなく、漫然と有効投票として計算した。この18票の有効・無効の判断は、当選の成否(得票数の逆転)に直結する状況であった。
あてはめ
問題の18票は、既に無効と判断された10票と全く同種の内容であり、検証手続において上告人代理人が受命裁判官に顕出した事実がある。そうであれば、当該18票も争訟の目的の範囲内に含まれると解すべきである。にもかかわらず、一方の10票を無効としながら他方の18票を有効と扱うのは、当選訴訟の判決が対世的効力を有することに照らしても著しく不合理であり、釈明を尽くして主張を明確にしなかった違法がある。
結論
原審には釈明権不行使の違法がある。18票の効力如何で判決結果が左右される可能性があるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
行政訴訟における職権証拠調べ(現行行訴法24条)や釈明権の限界に関する判例として活用できる。当事者が明示的に主張していない事実であっても、関連する主張や手続上の挙動から「争訟の範囲内」にあるといえる場合には、裁判所の釈明義務が肯定され得ることを示している。
事件番号: 昭和36(オ)1211 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二一一条の訴訟においては、同法第二五一条の二所掲の犯罪によつて刑に処せられた者が当選人の選挙運動の総括主宰者又は出納責任者であつたかどうかを、刑事判決に拘束されることなく、審理判断すべきものとする。