候補者中に下D康麿と上D愛一とがある場合に、下D(又は下D)愛一と記載された投票は上D愛一に対する有効投票と認めるべきである。
候補者中に下D康麿と上D愛一とがある場合に、下D愛一と記載された投票の効力
公職選挙法68条1項本文7号
判旨
候補者の氏名に誤記がある投票であっても、他に類似の氏名を持つ候補者が存在する状況下において、特定の候補者の氏名の誤記であると客観的に認められる場合には、当該候補者への有効投票として扱うべきである。
問題の所在(論点)
公職選挙法における自書式投票の効力に関し、候補者の氏名の一部(名字)を別の候補者のものと混同して記載した投票について、特定の候補者への誤記として有効と認められるか。具体的には、氏名の一部が誤っていても特定の候補者を指すものと合理的に判断できるかが問題となる。
規範
自書式投票において、記載された氏名が候補者の正確な氏名と異なる場合であっても、選挙人の真意を合理的に推認し、特定の候補者の氏名の誤記であると認められるときは、当該投票を有効として当該候補者に帰属させるべきである。
重要事実
選挙において「上D愛一」という候補者が存在した。一方で「下D康麿」という別の候補者も存在していた。この状況で、投票用紙に「下D愛一」(「D」の略字や類字を含む)と記載された投票がなされた。原審は、この投票を「上D愛一」への有効投票とは認めなかった。
事件番号: 昭和32(オ)870 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】「小D」と記載された投票が、特定の候補者である「木D」の誤記であると認められる場合には、当該候補者の有効投票として取り扱うべきである。 第1 事案の概要:選挙における投票において、投票用紙に「小D」と記載されたものがあった。一方で、本件選挙の候補者には「木D」という氏名の者が存在していた。原審はこ…
あてはめ
本件で「下D愛一」と記載された投票は、名字こそ「下D」となっているが、名においては「愛一」と正確に記載されている。候補者の中に「上D愛一」が存在する一方で、もう一人の候補者は「下D康麿」であり、名は全く異なっている。そうすると、選挙人は「上D愛一」に投票する意図でありながら、名字のみを別の候補者である「下D」と混同して誤記したものと認めるのが相当である。したがって、この投票は「上D愛一」の誤記として、同人への有効投票と解される。
結論
「下D愛一」という記載は「上D愛一」の誤記と認めるのが相当であり、当該投票は「上D愛一」への有効投票として受理されるべきである。
実務上の射程
投票の有効・無効(公職選挙法68条等)が争点となる事案において、記載の一部に他候補者との混同や誤字があっても、他の記載部分(特に名など)から特定の候補者を指すことが客観的に明白であれば、有効投票として救済する判断枠組みを示すものである。答案上は、選挙人の真意を最大限尊重すべきという趣旨とともに、他候補者との識別の可否を具体的事実から検討する際に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)20 / 裁判年月日: 昭和34年2月20日 / 結論: 棄却
一 「北條D一」、「北条D一」と記載された投票は候補者上条B一の氏名を誤記したものと解すべきである。 二 参議院全国区選出議員選挙で、「大西」と記載された投票は候補者小西Aの姓を誤記したものとは認められない。 三 参議院議員の通常選挙で、地方区選挙の投票用紙に全国区選挙の候補者氏名を記載した投票は無効である。
事件番号: 昭和32(オ)352 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】「クマダ」と記載された投票について、被上告人を指すものと解される事情がある場合には、公職選挙法68条等の無効事由に該当せず、有効な投票として扱うことができる。 第1 事案の概要:選挙において「クマダ」と記載された投票が1票存在した。この投票が公職選挙法68条(現行法の無効事由)に該当し、誰を指すか…
事件番号: 昭和33(オ)63 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
「A兼光」と記載された投票は、候補者A左文太に対する有効投票と解することはできない。
事件番号: 昭和31(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和32年9月20日 / 結論: 破棄自判
候補者中に石井若三郎と石川重郎とがある場合に、石川若三郎と記載された投票は石井若三郎に対する有効投票と認めるべきである。