一 公職選挙法第六八条の二は憲法第一一条、第一五条に違反しない。 二 候補者氏名のほかに記載された「必勝」は、公職選挙法第六八条第五号の他事記載にあたる。
一 公職選挙法第六八条の二の憲法第一一条、第一五条適否 二 公職選挙法第六八条第五号の他事記載の事例
公職選挙法68条本文,公職選挙法68条5号,公職選挙法68条の2,憲法11条,憲法15条
判旨
同一の氏名、氏又は名の候補者が二人以上いる場合、その氏又は名のみを記載した投票を有効とし、各候補者の得票数に応じて按分して加算する規定(公職選挙法68条の2)は、立法政策上の問題であり憲法15条等に違反しない。また、氏名のほか「必勝」と記載された投票は、他事記載に当たり無効である。
問題の所在(論点)
1. 候補者が複数いる場合に氏のみを記載した投票を有効として按分する規定(公選法68条の2)は、選挙人の意思を無視するものとして憲法11条、15条に違反し無効か。 2. 候補者氏名に「必勝」と書き添えた投票は、同法68条5号但書の「敬称の類」に該当し、有効となるか。
規範
1. 憲法15条等が保障する参政権に関し、特定の候補者を判別し難い投票の処理方法は立法府の裁量に委ねられており、合理的な政策目的があれば立法政策上の問題として合憲とされる。 2. 公職選挙法68条5号本文が定める「他事記載」の無効は、投票の秘密保持や買収防止等の趣旨から、同号但書の「敬称の類」に該当しない記載が付された場合に認められる。
重要事実
市議会議員選挙において、候補者中に同姓の「D長八」「D武男」の両名がいた。開票の結果、氏のみを記載した「D」票が33票あったため、開票区は公職選挙法68条の2に基づき、これを有効とした上で両名の有効投票数に応じて按分加算した。また、候補者名「E」の上に「必勝」と横書きされた投票について、開票管理者は「他事記載」として無効とした。上告人は、按分規定の違憲性と、「必勝」の記載が「敬称の類」にあたり有効である旨を主張して争った。
あてはめ
1. 氏名等が共通する候補者が複数いる場合に、誰への投票か確認し難い票を直ちに無効とせず、他の有効投票の比率に応じて按分加算することは、できる限り選挙人の投票意思を有効に活かそうとする合理的な仕組みといえる。これは立法政策上の選択肢の範囲内であり、参政権の基本的本質を侵すものではない。 2. 「必勝」という記載は、候補者への激励や期待を表す主観的な表現であり、氏名に付随して社会通念上認められる「敬称(様、殿など)の類」とは明らかに性質を異にする。したがって、他事記載に該当し無効と判断されることは正当である。
結論
1. 公職選挙法68条の2は合憲である。 2. 「必勝」の記載は「敬称の類」に含まれず、当該投票は無効である。よって上告棄却。
実務上の射程
選挙制度の細目に関する立法裁量の広さを認めた事例として重要である。特に「按分票」の合憲性を明確に認めている。また、他事記載の判断において「敬称の類」を限定的に解釈し、選挙人の政治的メッセージが添えられた票を無効とする実務上の基準を示している。
事件番号: 昭和26(オ)879 / 裁判年月日: 昭和27年7月11日 / 結論: 棄却
公職選挙法第六七条後段の趣旨は、投票の効力について、同法施行前よりも厳格に解すべきものとする趣旨ではなく、かえつて選挙人の意思が投票の記載で判断し得る以上は、なるべくこれを有効とすべきものとする趣旨である。
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…