公職選挙法第六七条後段の趣旨は、投票の効力について、同法施行前よりも厳格に解すべきものとする趣旨ではなく、かえつて選挙人の意思が投票の記載で判断し得る以上は、なるべくこれを有効とすべきものとする趣旨である。
公職選挙法第六七条後段の趣旨
公職選挙法67条
判旨
公職選挙法の下でも投票は選挙人自ら記載することが原則であり、投票の効力は選挙人の意思が判別できる限り、なるべくこれを有効として扱うべきである。
問題の所在(論点)
公職選挙法の施行に伴い、投票の効力判定に関する従来の判例を変更し、氏名以外の記載等がある投票を厳格に無効とすべきか(公職選挙法67条、68条の解釈)。
規範
投票の効力判定にあたっては、形式的・厳格に判断するのではなく、投票の記載から選挙人の意思が客観的に判断し得る以上は、可能な限りその投票を有効として取り扱うべきである。公職選挙法67条後段等の規定は、従前の判例をより厳格に変更する趣旨ではなく、むしろ選挙人の真意を尊重し、有効投票の範囲を広くとらえる趣旨と解される。
重要事実
本件は、選挙の投票の効力について、氏のみの記載や氏名以外の記載がある投票が無効とされるべきかが争われた事案である。上告人は、公職選挙法48条の代理投票制度の導入や、同法67条後段の追加、同法施行令36条の汚損投票用紙の引換規定などを根拠に、投票の効力を従来よりも厳格に解すべきであり、氏のみの記載等は無効であると主張した。
あてはめ
まず、代理投票制度(法48条)が認められても、自書投票の原則(法46条)は維持されており、自ら記載した投票の効力を厳格に解すべき理由にはならない。次に、汚損用紙の引換規定(施行令36条)は旧令にも存在したものであり、判例変更の根拠とはならない。さらに、法67条後段の規定は、投票の有効性を否定するためのものではなく、むしろ選挙人の意思が判別できる場合には極力有効として救済しようとする趣旨である。したがって、候補者の氏のみの記載や、意思に基づかない軽微な他事記載があるからといって、直ちに無効と解するのは相当ではない。
結論
公職選挙法の施行によっても、投票の効力に関する従前の判例を変更する必要はなく、選挙人の意思が判別可能であれば、当該投票は有効と解される。
実務上の射程
選挙無効訴訟や当選無効訴訟において、疑問票の効力を争う際の基本原理として機能する。答案上は、形式的な不備があっても「選挙人の意思の合致」を重視して有効性を肯定する方向での論拠(有効投票推進の原則)として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)290 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
裁判所は当事者の主張に拘束せられることなく投票の効力を判断することができる。
事件番号: 昭和47(行ツ)46 / 裁判年月日: 昭和47年7月14日 / 結論: 棄却
投票の裏面に多数の文字らしいものを記載(原判決別紙目録九参照)した投票は、他事記載のあるものとして無効と解すべきである。