投票の裏面に多数の文字らしいものを記載(原判決別紙目録九参照)した投票は、他事記載のあるものとして無効と解すべきである。
投票の裏面の記載を他事記載と認めた事例
公職選挙法68条5号
判旨
公職選挙法上の「他事記載」による投票無効の判断について、投票用紙の裏面への記載や、候補者名の下に引かれた斜線が意識的な他事記載と認められる場合には、当該投票は無効となる。
問題の所在(論点)
投票用紙の裏面への記載や、氏名の下への斜線の記入が、公職選挙法に規定される無効事由としての「他事記載」に該当するか。
規範
投票用紙に候補者の氏名以外の事項を記載することは、公職選挙法(本判決当時は同法68条1項5号等)により原則として禁止される。当該記載が単なる記号や誤記ではなく、選挙人の意図的な行為による「他事記載」と認められる場合には、投票の秘密保持や公正確保の観点から、当該投票は無効と判断される。
重要事実
選挙において投じられた票のうち、(1)投票用紙の裏面に記載がなされたもの、および(2)表面の候補者名(「D」)の下に斜線が引かれたものがあった。これらの記載が他事記載に該当し、投票が無効となるかどうかが争点となった。なお、具体的な記載内容の詳細については、判決文に添付された別紙目録の参照が必要であるが、本判決文上からは具体的な文言等は不明である。
事件番号: 昭和40(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和40年8月24日 / 結論: 棄却
候補者の氏名の記載のほか、その上部「○」印を附記した投票を他事記載として無効と解することは、公職選挙法第六七条後段に違反せず、また憲法第一五条の解釈を誤るものではない。
あてはめ
本件における投票用紙の裏面への記載、および候補者名の下に引かれた斜線について検討するに、これらは単なる過失や偶然による汚れ等ではなく、選挙人が何らかの意図を持って能動的に加筆した「意識的他事記載」であると認められる。このような記載は、特定の候補者を選択するという意思表示を超えた事項を投票用紙に書き込むものであり、法が禁ずる他事記載に該当すると評価される。
結論
裏面への記載および氏名の下への斜線は、いずれも意識的な他事記載と認められるため、当該各投票は無効である。
実務上の射程
本判決は、他事記載の無効判断において「意識的」な記載であるか否かを重視する実務上の判断基準を追認したものである。司法試験においては、投票の有効・無効を判定させる問題で、記載の態様が単なる汚れ(無効としない)か、特定の意図を持った他事記載(無効)かを区別する際の考慮要素として「意識性」を挙げる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)879 / 裁判年月日: 昭和27年7月11日 / 結論: 棄却
公職選挙法第六七条後段の趣旨は、投票の効力について、同法施行前よりも厳格に解すべきものとする趣旨ではなく、かえつて選挙人の意思が投票の記載で判断し得る以上は、なるべくこれを有効とすべきものとする趣旨である。