譲渡担保が暴利行為により公序良俗に違反するかどうかの判断に当つては、特段の事情のないかぎり、その契約により担保される債権の額とその譲渡担保の対象となつた全物件の価格を比較すべきである。
譲渡担保と公序良俗違反の成否
民法90条
判旨
譲渡担保契約が公序良俗に違反するか否かの判断においては、特段の事情がない限り、被担保債権額と担保物件の価格を正確に確定した上で、両者を比較検討しなければならない。一部の物件の時価が不明であるという理由で、全体の対価的均衡の検討を怠ることは許されない。
問題の所在(論点)
被担保債権額と担保物件の価格に著しい乖離がある場合において、担保物件の一部について価格が不明であるときに、その一部を除外した比較検討のみで譲渡担保契約の公序良俗違反(暴利行為性)の有無を判断できるか。
規範
譲渡担保契約が暴利行為として公序良俗(民法90条)に違反するか否かを判断するにあたっては、特段の事情のない限り、当該契約により担保される債権額と、譲渡担保の対象となった物件全体の適正な価格をそれぞれ確定し、これらを比較検討しなければならない。
重要事実
上告人と被上告人Bとの間で、建物、建物内の湯壺、およびその敷地を目的とする譲渡担保契約が締結された。昭和25年10月当時、建物と敷地の合計価額は約55万円であり、当時の被担保債権額の3倍を超えていた。原審は、湯壺の時価を認めるに足りる証拠がないとして、湯壺の価額を除いた状態での比較のみを行い、債権者が上告人を困窮に陥れて物件を奪取する策謀があったとは認められないとして、公序良俗違反を否定した。
事件番号: 昭和25(オ)312 / 裁判年月日: 昭和26年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件の特例法に基づく上告において、各号の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告を棄却する。 第1 事案の概要:上告人が民事上告事件の特例法に基づき上告を申し立てたが、その主張内容が同法1号ないし3号の事由に該当するか、あるいは法令解釈上の重要性を持つかが争…
あてはめ
本件譲渡担保契約の目的には建物や敷地だけでなく湯壺も含まれており、物件の価値を評価する際にはこれら全体を対象とすべきである。原審は、湯壺の時価が不明であるとしてその評価を放棄したが、特段の事情がない限り、譲渡担保の対象となった全物件の価格を確定した上で、被担保債権額と比較すべきである。湯壺の物理的実態や価値を明らかにせず、一部の物件価格のみに基づき公序良俗違反ではないとした原審の判断は、審理不尽・理由不備であるといえる。
結論
原審の判断には法令の解釈適用の誤りおよび審理不尽があるため、原判決を破棄し、担保物件全体の価値を精査させるため本件を差し戻す。
実務上の射程
暴利行為による公序良俗違反の主張をする際の基本枠組みを示す。特に不動産と付随設備(本件では湯壺)を併せて担保に取るような事案において、客観的な価値の不均衡を立証するために、目的物全ての適正な評価が必要であることを強調する際に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…
事件番号: 昭和25(オ)365 / 裁判年月日: 昭和28年5月8日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条ノ二に基く地方長官の許可を得ない農地の売買契約であつても、それが農地を耕作の目的に供するためになされ、かつ昭和二一年一〇月二一日法律第四二号をもつて改正された農地調整法施行当時すでに農地の引渡またはその所有権移転登記のいずれかが完了している場合には、その売買契約は有効である。
事件番号: 昭和43(オ)945 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: その他
(省略)