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特定の請求に関し原審が裁判を脱漏しているとしてその請求に関する上告を却下した事例
民訴法195条
判旨
消費貸借上の債務を担保するための代物弁済予約において、不動産の価額が債務額と合理的均衡を失する場合でも、当然に公序良俗違反とはならず、原則として清算型代物弁済予約と解すべきである。
問題の所在(論点)
消費貸借の担保としてなされた代物弁済予約において、目的物の価額が債務額を大きく上回る場合に、当該予約が公序良俗に違反し無効となるか。
規範
消費貸借契約上の債務を担保するため不動産につき代物弁済の予約をした場合、契約時における不動産の価額と弁済期までの元利合計額とが合理的均衡を失するようなときは、特別の事情のない限り、当該予約は清算型の代物弁済予約であると解するのが相当である。したがって、暴利を目的とする等の特段の事情がない限り、公序良俗違反(民法90条)により無効とはならない。
重要事実
上告人A1は、被上告人との間で準消費貸借契約を締結し、その担保として不動産につき代物弁済の予約(本件予約)を行った。本件予約の内容が、目的物の価額と債務額との間に合理的均衡を欠くものであったため、A1は公序良俗違反や権利濫用を主張して争った。なお、関連して即決和解の要素の錯誤や代理権の有無も争点となったが、原審はこれらを否定し、本件予約を有効と判断した。
事件番号: 昭和43(オ)946 / 裁判年月日: 昭和45年11月24日 / 結論: 棄却
親権者が第三者から金員を借り受けるにあたり、その未成年の子が連帯債務を負担し、また、同債務を担保するため、その子の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付賃借権の設定をなし、さらに、右代物弁済の予約完結の意思表示により右不動産の所有権が第三者に移転したことを即決和解または私法上の和解契約において確認する行為は、民法八二…
あてはめ
本件において、目的不動産の価額と元利合計額との間に合理的均衡が失われていたとしても、その事実のみをもって直ちに予約全体を公序良俗違反として無効とすべきではない。このような場合には、予約を「清算型(目的物の価額から債務額を差し引いた残額を債務者に返還する性質)」のものと解釈することで、債務者の利益を保護しつつ、取引の安全を図ることが可能である。原審が、本件予約を公序良俗違反や権利濫用にあたらないとした判断は、このような解釈を前提とする限り正当である。
結論
本件代物弁済の予約は有効であり、目的物の価額が債務額を超過する場合は清算義務を負う清算型予約として処理される。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、代物弁済予約を広く有効としつつ、不当な暴利を防ぐために「清算型」として解釈する法理を示した点に意義がある。答案上は、民法90条の適用場面において、過当な担保設定を直ちに無効とせず、清算義務の存在によって合理的に解決する枠組みとして引用できる。
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
事件番号: 昭和41(オ)975 / 裁判年月日: 昭和43年10月18日 / 結論: 破棄差戻
譲渡担保が暴利行為により公序良俗に違反するかどうかの判断に当つては、特段の事情のないかぎり、その契約により担保される債権の額とその譲渡担保の対象となつた全物件の価格を比較すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者の窮迫に乗じ不当な代物弁済契約を締結したといった事情がない限り、予約完結権の行使が公序良俗や信義則に反するものとはいえない。また、利息制限法施行前の合意に基づく遅延損害金を計算の基礎とすることも、直ちに権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)との間…
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。