弁護士たる訴訟代理人のついている上告事件について上告権の濫用の制裁を課した事例
判旨
被告が呼出しを受けながら全審級で不出頭・不準備を貫いた場合、原告の主張事実を自白したものとみなす判断は相当である。また、訴訟完結を遅延させる目的のみで上告を提起したと認められるときは、上告審は過料の納付を命じることができる。
問題の所在(論点)
被告が全審級を通じて実質的な争訟行為を全く行わなかった場合に、擬制自白(民訴法159条)を認めることの是非、および訴訟遅延目的のみによる上告提起に対する制裁(過料)の適否が問題となった。
規範
1. 審理の各段階において適式な呼出しを受けながら、正当な理由なく期日に出頭せず、かつ準備書面も提出しない場合には、相手方の主張した事実を自白したものとみなすことができる(擬制自白)。 2. 上告が専ら訴訟の完結を遅延させる目的で提起されたと認められる場合には、民事訴訟法第189条(現行法では第303条・第313条準用)に基づき、上告人に対して過料の納付を命じることができる。
重要事実
上告人(被告)は、第一審において高血圧症を理由に度重なる期日変更申請を行い、計7回の期日のうち5回を延期させた。第8回期日においても同様の申請をしたが、第一審裁判所は結審し判決を言い渡した。上告人は控訴したが、第二審の第一回期日にも出頭せず、期日変更申請も行わなかった。第二審は控訴状の陳述を擬制して結審し、控訴棄却の判決を言い渡した。上告人はさらに、原審で主張していない事実等を理由に上告を提起した。
あてはめ
1. 上告人は、第一審・第二審を通じて適式な呼出しを受けながら一度も出頭せず、答弁書等の準備書面も提出していない。病気を理由とする期日変更申請が繰り返されているが、記録上、防御の機会を不当に奪われた事情は認められない。したがって、被上告人の主張事実を自白したものとみなした原審の判断は正当である。 2. 訴訟の経過(執拗な期日変更申請と不出頭の継続)および上告理由の記載内容に照らせば、本件上告は、法的権利の実現ではなく、単に訴訟を遅延させる目的でなされたものと認められる。
事件番号: 昭和23(オ)44 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 債務者が弁済のため現金を債権者方に持参してその受領を催告すればこれを債権者の面前に提示しなくても、現実に弁済の提供をしたものとみるのが相当である。 二 債権者が予め弁済の受領を拒み、たとえ債務者が言語上の提供をしてもこれを受領しないことが明白な場合には、債務者は、言語上の提供をしなくても、履行遅滞の責を負わない。
結論
本件上告を棄却し、上告人に対し、訴訟遅延を目的とした濫用的な上告であるとして金2万円を国庫に納付することを命ずる。
実務上の射程
訴訟遅延目的の濫用的上告に対する制裁(民訴法303条・313条)の判断枠組みを示す事例として重要である。実務上、不出頭を繰り返す当事者への擬制自白の適用限界と、審理を著しく遅延させる不当な訴訟行為に対する裁判所の強い姿勢を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和33(オ)550 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論期日の閉廷後に出頭した場合は欠席(不出頭)にあたり、控訴審の第1回口頭弁論期日に控訴人が不出頭のまま弁論を終結し、その後の弁論再開を認めない裁判所の措置は、裁量権の範囲内として適法である。 第1 事案の概要:控訴審の第1回口頭弁論期日において、控訴人(上告人)が閉廷後に出頭した。原審(控訴…
事件番号: 昭和37(オ)639 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
民事調停規則第五条は、調停の申立があつた事件につき訴訟が繋属する場合において、右訴訟手続を中止するか否かを裁判所の自由裁量に委ねた趣旨と解すべきである(昭和二七年(オ)第五七一号昭和二八年一月二三日第二小法廷判決、民集七巻一号九二頁と同旨)。
事件番号: 昭和31(オ)289 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を非難するものにすぎない場合、民事訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人らが原審の事実認定を不服として上告を提起したが、上告理由の内容は、原審の証拠評価や事実認定のプロセスに対する非難を主とするものであった。 第2 問題の所在(論点):事実…
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…