土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により該土地の賃借権をもつて対抗することができないものと解すべきである。
土地賃借人が該土地上に長男名義で保存登記した建物を所有する場合と「建物保護ニ関スル法律」第一条による対抗力の有無
建物保護ニ関スル法律1条
判旨
地上建物を所有する土地賃借人が、自己の意思に基づき他人名義で建物保存登記をした場合、借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)による対抗力は認められない。対抗力の具備には、土地賃借人本人の名義で登記がなされていることが必要である。
問題の所在(論点)
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)にいう「登記」は、賃借人本人の名義であることを要するか。また、借地人の意思に基づく他人名義の登記に賃借権の対抗力を認めることができるか。
規範
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)に基づく土地賃借権の対抗力は、土地賃借人が「自己の名義」で登記した建物を所有することによって初めて発生する。賃借人が自らの意思に基づき他人名義で保存登記をした場合は、たとえ当該建物の実質的な所有者が賃借人であっても、その登記をもって賃借権を第三者に対抗することはできない。
重要事実
土地賃借人Dは、昭和21年にEから土地を賃借し、地上に建物を所有していた。Dは、自己の負債や税金対策などの財産保全を目的として、自己の意思に基づき、当該建物に長男F名義での所有権保存登記を経た。その後、被上告人(新地主)が昭和28年にEから土地を買い受け、所有権移転登記を完了した。Dは、F名義の建物登記があることをもって、被上告人に対し土地賃借権を対抗できると主張した。
事件番号: 昭和41(オ)682 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保有登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により該土地の賃借権をもつて対抗することができないものと解すべきである。
あてはめ
本件では、被上告人が土地の所有権取得登記を了した時点で、地上建物にはDの長男であるF名義の登記がなされていたが、D名義の登記は存在しなかった。DがF名義とした理由は、自身の負債や税金対策という個人的事情に基づく財産保全目的であり、D自らの意思によるものである。建物登記による対抗力の制度趣旨は、建物という外形的な公示を通じて土地賃借権の存在を第三者に認識させる点にあるところ、他人名義の登記では賃借権の存在を正当に公示しているとはいえない。また、前地主Eの承認があったとしても、対抗力の有無という客観的な公示の効力を左右するものではない。
結論
Dは、自己の名義で建物の登記をしていない以上、被上告人に対して本件土地の賃借権を対抗することができない。
実務上の射程
借地借家法10条1項の「登記」の意義を明確にした重要判例である。答案上は、家族名義(妻や子)での登記や、会社名義での登記がなされている事案において、対抗力を否定する根拠として用いる。ただし、判例(最判昭50.2.13等)には、表示の登記における軽微な不一致を許容するものもあるため、本判決が要求するのはあくまで「名義人の同一性」である点に注意する。
事件番号: 昭和37(オ)18 / 裁判年月日: 昭和41年4月27日 / 結論: その他
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗することができないものと解すべきである。
事件番号: 昭和44(オ)881 / 裁判年月日: 昭和47年6月22日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は、借地上に妻名義で保存登記を経由した建物を所有していても、その後その土地の所有権を取得した第三者に対し、建物保護に関する法律一条により、その土地の賃借権をもつて対抗することができない。
事件番号: 昭和41(オ)263 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
借地上の建物につき登記がなされる以前に右敷地の所有権移転があつたため、建物所有者が右敷地取得者に借地権を対抗できない場合にあつては、当該建物を譲り受けた者は、右敷地取得者に対し建物買取請求権を有しない。